火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第6章 放たれた光
杏寿郎がいない家は、がらんとしていた。
「兄上は、大丈夫でしょうか…心配です」
不安そうに千寿郎は呟く。
「大丈夫よ!きっと杏寿郎は大丈夫!
あんなに強いもの!」
「…そうですね!兄上ならきっと!」
「うん!!」
それから千寿郎と家のことを一通りしたあと、
二人は庭で素振りをしていた。
ふみのの治りかけていた
手のひらのまめがまた潰れ、痛み出した。
(このくらいで、へこたれてたら…っ)
くっと唇を噛んで痛みを堪え、木刀を奮う。
すると段々と振るう腕が急に軽くなる。
(…何…これは……っ)
握る手は強くなってるのに、
木刀を振るっている感覚がなくなっていく。
その時。
その場に光が落ちたかのようにカッと明るくなり、
白と薄い緑かかった閃光が手元を照らし、
バキっと木が割れる音がした。
その閃光の波動のせいなのか、
周りには土埃が舞う。
木刀は半分に裂けてしまっていた。
(……っ??!!
何が起こったの…?!)
その状況に頭が追いつかず、
ふみのは裂けた木刀を見つめ息をのんだ。
「ふみのお姉様、大丈夫ですか?!」
駆け寄ってくる千寿郎の声にはっとする。
「…うん!大丈夫…っ!」
「ぼ、木刀が…!!
!!!
ふみのお姉様、血が出ています…っ!!」
千寿郎に言われて自分の手元を見ると
両掌が血で真っ赤に染まっていた。
所々に糸で切ったような、
細かい傷がたくさんついていた。
「今、包帯を持って参ります!!」
千寿郎は慌てて家の中に戻る。
血で染まる自分の手のひらをふみのは見つめた。
不思議と痛みはない。
(…何が起こったの……?)
目の前で起こったことが分からず、
ただ呆然と立ち尽くすふみのだった。