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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第6章 放たれた光




杏寿郎は自室で、
明日の支度をしていた。

とんとんと襖が鳴る。

「杏寿郎、今大丈夫?」

「ああ!」

ふみのは襖を開け、部屋に入る。

「お休みの前なのに、急にごめんなさい」

「いや!構わない!大丈夫だ!」

杏寿郎の向かいにふみのは座る。

「…杏寿郎、…緊張、してる?」

「ああ、少しな。
 やっぱり初めてのことには、不安が付き物だな!」

いつもと変わらない杏寿郎の笑顔からは、
そんな様子は微塵も感じさせなかった。

「杏寿郎からはいつも教わることばかりで
 私は何もできなくて、ごめんね…」

「そんなことはない!ふみのとの鍛錬の時間は
 俺にとってもとても充実していた!
 家のことや食事のこともやってくれて…。
 ふみのが一緒だから頑張れたんだ!
 明日からは今までの成果を出せるよう行ってくる!」

「うん!少しでも杏寿郎の力になれたなら私も嬉しい!
 あ…これを渡したくて。
 何か、役に立てたらいいなと思って」

ふみのが差し出したのは、小さな巾着袋。

杏寿郎は受け取り、中身を見てみると
丁寧に縫われた手ぬぐいと包帯が二巻入っていた。

「よもや!これは!ふみのが縫ったのか?!」

「う、うん、ちょっと曲がっちゃったけど…。
 もし何かあったとき、使ってね」

「ありがとう!これは助かる!」

杏寿郎は嬉しそうに巾着袋を荷物にしまった。

「俺の留守の間、迷惑をかけてしまうが
 どうか父上と千寿郎を頼む」

「うん。ここで槇寿郎様と千寿郎くんと
 杏寿郎の帰りを待ってるね」

「ああ!必ず戻る!」

その杏寿郎の熱意に満ちた瞳に
ふみのは泣きそうになった。


杏寿郎の手に、ふみのはそっと手を乗せる。

「杏寿郎…必ず、必ず帰ってきてね…っ」

ふみのの潤んだ瞳に、杏寿郎は優しく微笑む。

「ああ、心配ない!俺は必ず戻る。約束だ」

ふみのの前に、杏寿郎は自分の小指を差し出す。

その小指にふみのは自分の指を絡める。

「うん!約束!」

ふみのは笑った。


(この笑顔のために、俺は必ず戻ってくる)

(杏寿郎がどうか無事に、戻ってきますように)


杏寿郎とふみのの想いを聞いていたかのように
夜空には幾千の星達が瞬いていた。

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