火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第1章 本家と分家
その晩。
あの少年を探してみようと
ふみのは昔のアルバムを見ていた。
(これは本家での写真ばかりだから
分家の人たちは写っていないかしら…)
最後の方のページに差し掛かったとき、
その少年の写真は表れた。
分家全員の集合写真だろうか。
少年は無表情で、でも先程のように険しい表情にも見えた。
『…お前の存在自体が目障りだ。
……お前のせいで……っ』
あの言葉が脳内を巡る。
(自分が何をしてしまったんだろう。
全く思い当たる節がない)
悶々と考えていると、とんとんと襖を叩く音がした。
はっとして、返事をする。
襖が開いて顔を覗かせたのは、健一郎だった。
「ふみのねえさま」
「健一郎!もう寝る時間なのに!
かあさまに見つかったら叱られてしまいますよ」
ふみのはアルバムを閉じて、健一郎に駆け寄る。
寝巻き姿の健一郎は、心配そうにふみのを見ていた。
「怖い夢でも見たの?」
「ふみのねえさまが、しんぱいで、きました
ずっと、おかおがかなしそう、だったから…」
「健一郎…」
優しい健一郎の瞳は確かに眠そうではあったが、
ふみのを心配して起きて来てくれのだ。
ふみのの目頭が熱くなる。
こんな可愛い優しい弟に心配をさせてしまうなんて。
「ごめんなさい、心配をかけてしまって。
でももう大丈夫よ。健一郎が来てくれたから」
笑顔で言うと、健一郎も優しく小さく笑ったが、
俯いてしまった。
「…ぼく、そばにいたのに
なにもできなくて、ごめんなさい」
「……っ」
こんな小さな可愛い弟にそんなふうに思わせてしまったふみのは
情けなくなってしまった。
健一郎を優しく抱きしめる。
「ううん。健一郎がそばにいてくれたので、心強かったです。
健一郎が謝ることなんて、何もないのよ」
健一郎の肩から顔を離すと、
ふみのをじっと見つめる健一郎がいた。
「…これからはいっしょうけんめいに
ふみのねえさまとよしのねえさまを
おまもりします」
まだ小さい体で、でも一生懸命に伝えてくれる健一郎は
今まで見たことがないくらい、ぐっと大人びて見えた。
「健一郎、ありがとう。
強い弟がいて、私はしあわせものです」
笑顔で言うと、健一郎も笑顔になった。