火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第1章 本家と分家
ふみのが頭を上げようとした時、
少年はまた吐き捨てるように言い放った。
「…お前の存在自体が目障りだ。
……お前のせいで……っ」
少年は、ふみのをぎろりと睨みつけた。
ふみのを心底嫌っているように。
じとっと汗が背中を伝う。
少年はそれ以上何も言わず、廊下の奥へ消えて行った。
ふみのは浅い呼吸しかしていないことに気づいた。
(何なの…何であんなふうに私を見るの…?)
訳が分からず、ただ一点を見つめているふみのを
健一郎は心配そうに、泣きそうな顔で見上げていた。
「…ふみのねえさま、だいじょうぶ?」
「あ、う、うん、驚かせてしまってごめんね。大丈夫よ。
…さ、よしのを探しましょう!」
健一郎の頭を撫でて、
握っていた健一郎の手を更にぎゅっと強く握った。
胸がざわざわしていたが、
ふみのはくるりと向きを変えて
よしのを探し始めた。
「やーっときたー!」
待ちくたびれてしまったのか、よしのは自分の方から
ふみのと健一郎に駆け寄ってきた。
「ごめん、ごめんね。よしのがあまりにも上手に隠れているものだから、見つけるのに時間がかかってしまったの。」
「もー!でも、これで私の勝ちね!」
にひひと嬉しそうに笑うよしのを見ていたら、
先程のもやもやした気持ちは薄れた。
(本当に何だったのかしら…)
考えても考えても、全く分からないふみのは、ふう、と
息を吐いて住まいの方へ戻って行った。