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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第5章 それぞれの思い




朝食をとった後、家の周辺を走り込み、
帰宅してふみのは杏寿郎から
素振りの姿勢を見てもらっていた。

千寿郎は息が上がってしまい、縁側で休んでいた。



「…こう?」

「あともう少し、内側に捻ると、
 より力を入れやすくなる!」

「こう、かな」


すると、ふみのの背後から
ふわっと、杏寿郎の両腕が伸びてきて、
柄を握るふみのの手に、
自分より大きな手が重なる。

「こうだ、もっと握る力を強くするんだ」

杏寿郎は両手で、
ふみのの手を、上からぎゅっと握る。


(あ、あれ、私、また、どきどき、してるっ…)

杏寿郎に握られた手元に、
じわじわと熱が集まってくる。

ちらりと袖から見える、杏寿郎の鍛えられた腕にも
ふみのは釘付けになった。



はっと、ふみのは後ろを振り返り、
杏寿郎を見上げた。


二人の視線が、重なる。


いつの間に、こんなにも、
自分の背丈を追い越していたのだろう。

ふみのは、杏寿郎の凛々しく、燃えるような瞳を
初めてちゃんと、見たような気がした。


(…っ、ああ…っ、どうしよう…っ)


ふみのは、杏寿郎に包み込まれた自分の背中に、
どんどん熱が帯びていくのが分かった。

ふみのの心臓の音が、
どんどん大きくなっていく。

このまま鼓動が、自分の背中を通して
杏寿郎に伝わってしまうのではないかと思うくらい、
大きく鳴っている気がする。



杏寿郎も、近くなってしまったふみのとの距離に、
動けなくなってしまった。

(……この距離は、まずい…っ)

こんな近くでふみのを見たのは初めてではないのに、
心臓がばくばくと鳴っていた。


いつから、こんなにも女性らしく、なっていたのか。

出会った頃の幼さも残しつつも、
以前より少し大人びたふみのに
釘付けになってしまった。

そしてふわりと漂う、
花のような、ふみのの香り。


しばらくその体勢のまま、
二人は見つめ合っていた。

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