火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第5章 それぞれの思い
鬼殺隊で隊士になるということは、
刀を振るい、鬼の頸を斬るということだ。
如何なる場合でも、冷静に状況を判断し、
目の前にいる鬼の首を切らなければならない。
首を切らなければ、倒すことはできない。
自分の前に、どんな鬼が現れるなんて、
それすらも分からない。
一寸先の暗闇に、一心不乱に刀を奮っていくようなものだ。
共に戦う仲間をも守り、
時には自分の命も危うくなることだってある。
生半可な気持ちでは、
鬼殺隊への入隊は望んではいけない。
ふみのは、自分が浅はかな気持ちで
鬼殺隊を目指しているのではないかと、自分自身に問う。
自分は、鬼殺隊の隊士になる覚悟が
本当にできているのだろうか。
目を閉じると、
蘇ってくる。
家族を、
一族を殺された、あの日の夜を。
響き渡る、悲鳴と叫び声。
建物が燃える匂い。
恐怖に耐えながら
勇気を振り絞って鬼に立ち向かい、
自分を庇ってくれたよしのと健一郎、女中の姿。
一瞬で奪われた、大勢の命。
しあわせな日常が消えてしまった。
気がつくと、
ふみのは爪の後がつくほどに拳を硬く握りしめていた。
(もっと、もっと強くなりたい…っ。
あの日、私を救ってくださった槇寿郎様のように)
ふみのは、すうっと息を吸い、
自分の思いを、奮い立たせた。