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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを



杏寿郎は敢えてふみのを避けていた。

もし、ふみのに
自分のことを思い出してもらったとしても、
過去のような関係になれるのか。
そんな確証はどこにもない。

もしなれなかったらと思うと、
怖くなってしまったのだ。

でも、いつでも思い出してしまうのは、
以前と何一つ変わらない、
陽だまりのような
やさしい笑顔を見せてくれる
ふみののことだった。

「…確かに、
 “そうならなかった時”のこと考えたら、
 怖くはなっちまうよな」

「…結局、俺は自分勝手だな」

「でもそんなもんじゃねーの?恋愛って。
 それによ、前は前で、紆余曲折あって、
 めでたく結ばれたんだし。
 今回もそーゆーのがありつつも、
 煉獄と一ノ宮は結ばれるんじゃね?
 現代版の困難つーの?
 どの時代もさ、そーゆーのが付きものってゆーか」

「…紆余曲折…、うむ、そうだな…」

天元のアドバイスが、
杏寿郎の心にすとんと落ちた。

確かに、何事もスムーズに進むことなど、
そう滅多にないことだ。
何事にも試練や
乗り越えなければいけない壁はある。

鬼殺隊にいた時でも、
お互いを思うからこそ、
生まれたすれ違いもあったのだ。

杏寿郎は、ぎゅっと、握り拳に力を込める。

「…ありがとう。宇髄。
 未来が怖いからとて、
 それに背を向けるのは良くないな。
 …週末、久々に図書館に行ってみようと思う」

「お、いーじゃん。
 一ノ宮も煉獄に会えたら、
 喜ぶんじゃねーの?」

「ああ。そうだと、いいのだが」

小さく笑う杏寿郎を見て、
胸を撫で下ろす天元。

「オシ!景気付けに、
 仕事終わったら焼肉でも行くか!」

「うむ!腹が減っては、というやつだな」

「お、エンジンかけてきたじゃん?
 不死川たちも呼ぼーぜ?」

「賛成だ!」

やはり杏寿郎は溌剌とした笑顔が似合う、と
天元はパーカーのフードに隠れて笑みを落とした。


・・・


その週末、
杏寿郎はふみののいる図書館へと向かった。

夏休み終盤ともあって、自習スペースには、
宿題や課題に追われる子供たちで混雑していた。


  …受付カウンターにも、いない、か…


しかし図書館内をぐるりと歩いても、
ふみのの姿は見られなかった。

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