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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第5章 それぞれの思い




ぱたぱたと足跡が聞こえ、
息を切らしながら、ふみのが戻ってきた。

「今、包帯、巻き直してあげるね」

「ああ、すまない。ありがとう」

「大丈夫?痛くない?」

「何ともない!もう慣れてしまった!」

もう少しで終わるからねと、
丁寧に包帯を巻くふみのを見て、
杏寿郎の心は、じんわりと、あたたまっていく。

やさしい、ひだまりのような笑顔に、心が癒される。

杏寿郎は、ふみのが自分にとって
こんなにもかけがえのない存在になっていることに気づいた。

これを人は、恋と、言うのだろうか。
愛しいとは、この気持ちのことを指すのだろうか。




「はい!できた! 
 止血できたけど、あまり無理はしないでね」

「すまなかった。ふみの、ありがとう。」

ふみのは杏寿郎の手を、
そっと彼の膝の上に置いた。



ふと、二人の目が合う。

(あれ…いつから杏寿郎ってこんなにも、
 逞しい顔つきになっていたのだろう…)

ふみのの心臓が、どきんと再び鳴った。



「ふみの、寝る前にすまなかった!
 また明日も打ち込むぞ!」

「う、うん!明日もよろしくお願いします!」

「うむ!では、おやすみ!」

「お、おやすみなさい!」

杏寿郎はふみのの部屋から出て、
静かに襖を閉めた。


(……)


ふみのは自分に起こった感情に追いつけず、
その場に力が抜けたようにぺたんとしゃがみ込む。

(私、どうして急に、
 杏寿郎にこんなにどきどきしているんだろう…)

今までは特に何とも、感じていなかったのに。

ふみのは、はあと、息を吐く。

(明日、杏寿郎の顔、ちゃんと見れるかな…)

しばらくの間、
ふみのはそのまま動けなくなってしまった。





杏寿郎は部屋に着き、
ふみのへの気持ちを思い出していた。



(…ああ、きっと、俺は、ふみのが好きなんだ)



初めて、ふみのの笑顔を見たときから。

あの声に。

毎日を、大切に生きる、あの姿に。

ずっと、俺はふみのを、想っていた。




ふみのと杏寿郎の気持ちは、
今までにない色を残しながら、
少しずつ変わり始めていた。


二人の心に、小さな恋が、
ゆっくりと芽吹いていく。


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