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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを




ぽっと照れるふみのに
杏寿郎も嬉しさが込み上げた。



気付けば夕立は遠のいてゆき、
茜色に染まり始めた西の空には、
虹がかかっていた。

「あっ、杏寿郎さん!
 見てください!虹です!
 とっても綺麗ですね…!」

車のフロントガラスについた水滴と陽の光が相まって、
その隙間から大きな虹が空いっぱいに広がっていた。

ふみのの瞳にも、
その光が反射してきらきらと瞬く。


「ああ、本当に…綺麗だ」


杏寿郎の視線の先には、
嬉しそうに笑うふみのが映っていた。

共に過ごした過去の記憶がなくても、
隣でふみのがいてくれるだけで、
杏寿郎は充分に幸せだった。

「…ひまわり畑も夕立も、
 私の大切な思い出になりました。
 杏寿郎さん。
 今日は本当に、
 ありがとうございました」

杏寿郎を見てにっこり微笑むふみのの頬に
夕陽があたりほんのり赤らんだ。

「俺もとても楽しかった。
 こちらこそありがとう。
 突然の誘いだったのにもかかわら…」


 グ〜〜〜〜〜…


「「 !! 」」

突然、杏寿郎の腹から鳴った音に
ふみのはくすりと笑ってしまった。
杏寿郎は恥ずかしそうに、
視線を逸らした。

「むっ…!こ、これは失敬!
 穴があったら入りたい!」

「ふふっ、全然大丈夫ですよ!
 近くにお店があったら、
 そこで夜ご飯でもしませんか?」

「…!ああ、それは名案だな!
 調べてみよう!」

二人はスマホで周辺を検索し、
近くのレストランに向かうことにした。





「とっても美味しいお店でしたね!
 お腹いっぱいです…!」

「ああ!俺もたらふく食べてしまった!
 また是非行こう!」

「はい!」

帰り道。
今まで夜の運転に杏寿郎は何処となく
寂しさを感じていたが、
今日は街の明かりがいつもよりも眩しく見えた。

隣で楽しそうに話すふみのが
本当に可愛らしくて、
杏寿郎はただその笑顔に癒されていた。

隣で笑みを浮かべていた杏寿郎に
ふみのは、はっとした。

「…す、すみません!
 私ばかり話してしまって…っ!」

「いや、ふみのさんが
 楽しそうにしてくれているだけで、
 俺も嬉しい」

にっこり笑ってくれた杏寿郎に、
ふみのはどきっと胸を打たれた。

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