火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを
まるで
明かりが 灯っているみたい
「…杏寿郎さんの髪、
きらきら光ってて、
おひさまみたいです。
…す、すみません!
突然こんなこと…っ」
弾かれたように
ふみのは顔を上げると、
杏寿郎の視線と交わった。
改めて見る杏寿郎のその緋色の瞳に
ふみのは釘つけになった。
…この瞳を
前もどこかで───…
でも、頭に靄がかかっているかのように、
それ以上のことは何も思い出せなかった。
すると、杏寿郎はくすりと微笑むと、
自分の持っていたハンカチで、
ふみのの髪の水滴を拭ってくれた。
「ふみのさんの髪も、
綺麗な色だ」
「 っ!
あ、ありがとうございます…っ、
すみません…」
気付けばふみのは
目の前の杏寿郎に
心を奪われてしまっていた。
どうしよう
息ができないくらい
どきどきが 止まらない…っ
そのハンカチ越しに伝わった
杏寿郎の手の温度。
それはとても心地よくて
あたたかく、懐かしいぬくもりだった。
…私
知ってる
前にも どこかで
感じたことのある
このぬくもり
でも
一体どこで…─────
「ふみのさん、大丈夫ですか?」
「…っ!」
杏寿郎の声に、
ふみのは我に返った。
「す、すみません…っ!
大丈夫です…っ」
先日の杏寿郎からの抱擁をきっかけに、
誰かの記憶の中にいるような不思議な感覚が
再びふみのの脳裏に過る。
「冷えるといけないので、これを」
「!」
杏寿郎はふみのの肩に
薄手のカーディガンをかけてくれた。
「すみません、
何から何まで
ありがとうございます…っ」
「いえ。…残念だが、
今日は帰るとしよう」
「そうですね…。
でも、いいお天気の日に、
杏寿郎さんとひまわりを見れて
嬉しかったです!
夏の素敵な思い出ができました」
「…! それは良かった。
…その、ふみのさんがよければ、
また、こうして会うことは…、
できるだろうか?」
「…! はい!私でよければ全然…っ!
嬉しいです。ありがとうございます」