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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを




 き、緊張した〜〜〜っ…


ふみのはあの日以来、
杏寿郎のことを考えるたびに
どきどきと心臓が高鳴った。


 …たった一度、
 抱きしめてもらっただけなのに

 どうしてこんなにも
 煉獄さんのことばかり
 考えてしまうんだろう…


きっとこれは、いわゆる
恋なのだと、ふみのは
杏寿郎に思い馳せていた。

でも不思議だ。
まだ会って間もないのに、
杏寿郎のことを想うと
心が和やかになった。


 明日、煉獄さんに
 喜んでもらえるといいな…

 よしっ

 とびっきり美味しいアップルパイを
 つくるぞ!


ふみのは大きく深呼吸をして
エプロンを身につけた。

・・・


翌日、12時半頃のこと。
天気予報通りの真夏日だった。


すると、ふみののスマホに
杏寿郎から着信が入った。

「も、もしもし、一ノ宮です」

『こんにちは。煉獄です。
 今、お電話大丈夫ですか?』

「はい!
 煉獄さん、お仕事お疲れ様です…!」

『ありがとうございます。
 今から職場を出て、
 そちらに伺おうと思うのですが…、
 大丈夫ですか?』

「はい!大丈夫です!
 ご足労おかけして
 すみません…。
 よろしくお願いいたします」

『では、エントランス前に着いたら
 またご連絡しますね』

ではまた後ほど、と2人は通話を終えると、
ふみのは緊張からか手に汗が滲んでいた。



30分ほど経った頃、
再び杏寿郎からの着信が入り、
ふみのは出来立てのアップルパイを持って
エントランスまで降りていった。


「煉獄さん!」

「!」

車の外で待っていた杏寿郎は
ふみのの白いワンピース姿に
釘付けになってしまった。

「お暑い中、わざわざこちらまで
 すみませんでした…っ。
 先日は本当に
 ありがとごうございました」

「いえ、こちらこそ、
 ご丁寧にありがとうございます」

「あの、煉獄さん…、アップルパイは
 お好きでしょうか…?
 何も好みを伺わないで
 勝手に作ってしまったんですが…っ」

ふみのが不安そうに杏寿郎を見ながら、
紙の箱に入ったアップルパイを差し出した。

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