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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを






























「ふみの!!!」




「…───っ!」





男はその声に気付くと
慌ててふみのを手放し、
道の奥へと全速力で逃げていった。


ふみのは崩れるように、
地面にしゃがみ込んでしまった。


そしてゆっくりと顔を上げると、
目の前から杏寿郎が駆けてきたのだ。



「…れん ごく…さん…?」


「ふみの…っ、大丈夫か!?
 怪我は…っ、
 どこか痛めてはないか…っ?」



杏寿郎は、呼吸を整えながら
朦朧とするふみのの前に腰を下ろした。

ふみのは何か返事をしようとするが、
おさまらない恐怖に声が出なかった。

ふみのの頬には、
止めどなく大粒の涙が流れた。


フードの男はどこにも見当たらず、
暗闇へと姿を眩ませていた。


「…どう…して…、
 煉獄さんが…ここに…?」


状況の整理ができていないままのふみのは
ただじっと杏寿郎を見つめていた。

杏寿郎はふみのの涙を
ハンカチでそっと拭った。

「…今日、職場近辺で
 不審者が出たと情報があり…。
 …何となく胸騒ぎがして、
 いつもと違うルートを通って
 帰宅していたところだった。
 …すまない、もう少し早く来ていれば
 こんなことには…っ」

涙が止まらないふみのを見て、
杏寿郎は下唇を噛む。

「いえ…っ。助けていただいて…、
 本当に、ありがとう…ございました」

まだ怯えているふみのの声は
ちいさく震えていた。

俯くふみのはふと
じくじくと痛む手首に目を向けると、
酷い内出血を起こしていた。

「!! ふみの、手首が…っ!
 すぐに手当をしなければ…っ。
 ふみの、…い、いえ、
 一ノ宮さん、歩けますか?」

杏寿郎の問いかけに、
ふみのはちいさく頷く。

ふみのはゆっくりと立ち上がると、
杏寿郎に支えられながら車へと向かった。


・・・


「今、湿布を持ってきますので」

「ありがとうございます。
 本当に…すみません」


気になさらずにと、杏寿郎は
ふみのをソファに座らせると、
棚から湿布と包帯を取り出した。

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