火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを
お腹すいた…
帰ってご飯を食べて
お風呂に入って…
きっと寝るのは12時過ぎね…
慣れない一人暮らしに加え、
溜まった家事のことも考えると
余計に体が重たく感じる。
ふみのは大きくため息をついた。
…ちょっと暗いけど…
今日は近道しちゃおう
ふみのは大通りではなく、
その脇の細い道を入った。
街灯も人気も少ない仄暗い道だが、
大通りを歩くより半分ほど時間が短縮できる。
ふみのは冷蔵庫に入っている
食材を思い出しながら、
夕飯に何を作ろうかと
考え歩いていた。
………
あれ
…誰か
ついてきてる……?
すると、背後から
自分以外の足音が
聞こえてきたのだ。
ふみのは気にしないように
歩き進めるも、その音は徐々に
速度を上げてきた。
突如、背筋を駆け上がる寒気と恐怖心。
ふみのはその場から勢いよく走り出した。
するとその足跡は、
ふみのを狙うかのように
迫ってきたのだ。
ふみのはただ前を向き必死に走るも、
怖さで震えてしまい、
思うように足が前に出ない。
気がつくと、その足音は
もうふみのの真後ろにあった。
「…遅ぇなァ」
「…───っ!!」
唸るような声が耳元で聞こえた時、
ふみののすぐ横には
黒いフードを深く被った男の顔があった。
男の口元がにやりとほくそ笑む。
ふみのはあまりの恐怖に、
声が出なかった。
そして突然、手首を強く握られ、
ふみのは強引に真後ろに引っ張られた。
「…っや、やめ…っ、
───っ…!!」
後ろに倒れそうになったふみのは、
その男の胸元に抱え込まれ、
もう片方の手で口元を封じられた。
抵抗しようと足掻くも男はびくともしない。
きつく握られた手首には激痛が走った。
過呼吸になっていくふみの。
口元を覆う男の手からは煙草の匂いがした。
ふみのの視界が涙で霞む。
そのまま目眩に襲われ、
脚の感覚もなくなっていく。
だれ か…っ────
掴まれていた手首はいつの間にか解かれ、
男の手はふみのの腰を撫でながら
ぬるりと舐めるように胸元へと這い上がった。