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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを



「あの、煉獄さんには、
 弟さんがいらっしゃるのですか…?
 す、すみません…っ、
 実は先日図書館で
 ご一緒にいたところを拝見して…、
 仲がいいんだなぁってほっこりしました」

「いえ、大丈夫ですよ。
 10歳下の弟がひとりいます。
 実は図書館のことは弟に教えてもらったんです。
 両親もとても図書館のことを気に入っていて。
 実際にお伺いして、その蔵書数に驚きました。
 普段なかなか出会えない文献ばかりで、
 どれを借りようかと迷ってしまったほどです」

「そうだったんですね、ご家族様まで…!
 少しでもお役に立てたのなら良かったです!」

嬉しそうに笑うふみのに
杏寿郎も笑みがこぼれた。

ふみのはあの図書館で、
司書をしていると話してくれた。

今までいた図書館から異動になり、
この春から実家を離れて
一人暮らしを始めたとのことだった。

杏寿郎は歴史の教師であることを伝えると、
その類の本を多く借りていたので、
そうではないかとふみのは予想していたらしい。

ふみのは、本が好きで休みの日も
よく図書館に出入りしているとのことだった。

ひとつひとつの話しにうんうんと頷きながら、
楽しそうに耳を傾けてくれるふみのに
杏寿郎はそのひとときに癒された。

ふみののかろやかな笑い声が
車内に響いた。



 ああ なんて

 心地良い時間なのだろう



このまま時間が止まればいいと
杏寿郎は何度も、何度も思った。


しかし、車はあっという間に
竈門ベーカリーの前に到着してしまった。

気付けば雨はほとんど止みかけていたが、
杏寿郎はふみのが濡れないように、
店の前に立つ街路樹の下に車を停めた。

「煉獄さん、
 今日は本当にありがとうございました…!
 本当に助かりました!」

「いえ、少しでも
 お役に立てたのであれば良かった。
 では…お気をつけて」

「…あっ、煉獄さん、すみません、
 少しだけ、お待ちいただいても大丈夫ですか?」

「…? あ、ああ」

するとふみのは車を出ると、
小走りで竈門ベーカリーの店内に入っていった。

暫くしてふみのが
店から出てくると運転席へと回り、
杏寿郎は車の窓を開けた。

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