火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを
「近くにこんな素敵な場所があるって、
嬉しいですよね!
あそこの受付カウンターで、
新規の申し込みと
本の貸し出しができますよ!」
「うむ!承知した!
少し中を散策してみようと思う!」
「分かりました!
俺は課題をしに、
隣の学習スペースにいますね!」
ではまた後で、と杏寿郎は千寿郎と別れ、
図書館の中へと向かっていった。
杏寿郎は手前の本棚から順番に見て回ると、
壁沿いに並んだ歴史の本棚に辿り着いた。
凄い、こんなに前の本まで
置いてあるとは…
気になる文献ばかりで
目移りしてしまうな…
前から気になっていた本もあり、
杏寿郎は何冊か手に取ると、
図書館内に設置された
長テーブルに腰掛けその本を読み始めた。
気付けば1時間ほど、
読み耽っていたらしい。
残りは家で読もうと、
本を借りるため受付カウンターに向かった。
…?
誰もいない…?
杏寿郎はカウンターの周りを見渡すも、
特にスタッフらしき人が見当たらなかった。
暫く待とうと思い、
持っていた本の続きを読もうと、
近くの椅子に腰掛けた、その時だった。
「お待たせしてしまい、
大変申し訳ございません…っ。
本の貸し出しで、
お待ちの方はいらっしゃいますか…?」
その優しく透き通った声色に
杏寿郎ははっと目を見開く。
…この…声は……っ
杏寿郎がカウンターに目を向けるとそこには、
ふみのが現れたのだった。
杏寿郎は驚きのあまり、
その場からふみのを見つめたまま、
固まってしまった。
そしてゆっくりと立ち上がり、
カウンターへと向かった。
目の前に
ふみのが いる
夢を見ているのではないかと
杏寿郎の鼓動が性急に早まっていく。
ふみのは杏寿郎に気付くと、
にっこりと微笑んだ。
「お待たせして、
申し訳ありませんでした…っ。
こちらのご利用はございますか?」
「…い、いえ。初めてに…なります」
杏寿郎の声が小さく震えた。
…まさか─────
杏寿郎の鼓動が荒々しく騒ぎ立てる。