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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第31章 《番外編》咲く色を知るのは




 もっと きょうじゅろうさんと
 おはなししてみたいな…!


この楽しいひとときが終わってほしくないと
ふみのは何度も、何度も思った。

それは杏寿郎も同じだった。

ふみのの鈴の音のような笑い声に
ころころと変わる純粋無垢な表情。

杏寿郎もふみのに
釘付けになってしまったのだった。


・・・


「健蔵殿、ふみの殿。
 今日は大変お世話になりました。
 杏寿郎のことまでお気遣いいただき、
 感謝いたします」


屋敷の門の前で、槇寿郎と杏寿郎を
健蔵とふみのは見送っていた。

「いえ、こちらこそ、
 いつもありがとうございます。
 槇寿郎殿のお陰で
 この平穏な日々を過ごせています。
 杏寿郎くん、
 今日はふみのとも遊んでくれて
 どうもありがとう」

健蔵が杏寿郎に屈むようにして話しかける。
杏寿郎は健蔵とふみのを見ると、
さっと頭を下げた。

「こっ、こちらこそ、
 ありがとうございました!」

ふみのは名残惜しさで言葉に詰まってしまった。

楽しい時間は何故あんなにもあっという間なのかと、
ふみのの心にはぽっかりと穴が空いたようだった。

杏寿郎の隣にいて初めて感じた
言葉では言い表せない、
陽だまりのようなあたたかい気持ち。



ふみのは、
杏寿郎のその緋色の瞳が、
太陽のように明るい笑顔が、
好きだと思った。



 …また あえるかな…



ふみのが寂しそうに俯き、
しょんぼりとしているのを
健蔵は分かっていた。

ふみのはどうにかして
杏寿郎とまた会う手段を必死に考えるも、
焦って上手く言葉が纏まらない。

「では、槇寿郎殿、杏寿郎くん、
 帰り道もお気をつけて」

「ありがとうございます。
 またお伺いさせていただきます」

失礼します、と槇寿郎と杏寿郎は頭を下げ、
背を向けて歩き出した。



 杏寿郎の姿がどんどん遠くなっていく

 変だと思われてしまっても構わない


 この気持ちを
 聲にしなければ

 想いは届かない─────

























「きょうじゅろうさんっ!!」

「…!!」




ふみのの声が道に響き渡る。


その声に、杏寿郎は目を丸くし、
くるりと振り返った。


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