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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第31章 《番外編》咲く色を知るのは




 …なにかいるのか…?



杏寿郎はしずかに
その芍薬の前に近づき、
大きな葉をそっと掻き分ける。





「…!!

 ふみの…さん…っ?!」





ふみのはその呼びかけにはっと驚き顔を上げ、
見下ろす杏寿郎とぱちりと視線が重なった。

何本も植えられた芍薬の苗の隙間に
小さくちょこんとしゃがみこむふみの。

大輪の芍薬に囲まれたふみのは、
まるで童話の世界に出てくるような
かぐわしい姫のようだった。

そんなふみのに杏寿郎は見惚れてしまい、
じっと見入ってしまう。

二人の頬が徐々に赤く染まってゆく。



「…み…、みつかって…しまいました…っ」



恥ずかしそうに何度も瞳を瞬かせながら、
芍薬の花の下から杏寿郎を覗くふみの。


そのふみのの愛らしい視線に
杏寿郎のなかで何かが弾けた。





「なんと、かれんな…っ!」


「・・・カレン…?」





杏寿郎の頬が一段と赤く熱る。

ふみのは言葉の意味が分からず、
ただ茫然と杏寿郎を見つめてしまった。


いつまでそうしていただろうか。


「…きょうじゅろうさん…、
 だいじょうぶ、ですか…?」

「はっ…!」


ふみのの声に
杏寿郎ははっと我に返った。


「きょうじゅろうさん、すごいです…!
 おみごとでした…!
 かくれんぼのめいじんですね…っ!」


照れながらもにっこり笑うふみのに
杏寿郎は忽ち目を奪われる。



 なんとかわいらしいかたなのだろう…っ



杏寿郎の心は、
ふみのの笑顔に
すっかり囚われてしまっていた。


 …あれ…?
 きょうじゅろうさんが、うごかない…


固まったまま微動だにしない杏寿郎を
ふみのは心配そうに見つめた。

「…きょうじゅろうさん…?
 どこか、いたいですか…?」

「…い、いえ!
 だ、だいじょうぶです!

 ふみのさんを!
 はなのしたで、みつけましたっ!!」

「…???
 は、はい!そうです!」

何故か片言になる杏寿郎に
ふみのは戸惑っていると、


「あら、ふみの、
 こんな所で何をしているの?」

「…! かあさま…!」


みちが中庭に繋がる廊下の戸から
顔を出していた。

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