火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第31章 《番外編》咲く色を知るのは
「…は、はい!
いもうとのよしのと、いっしょに…っ」
「あ!!ふみのおねえさま!!
やーーっとみつけた!!」
「! よ、よしの!」
「 ! 」
ふみのが後ろを振り向くと、
膨れた顔のよしのがこちらに駆けてきた。
「もう!かくれんぼはどうしたのですか!」
「ご、ごめんね…っ。
その、かくれようとしていたら…」
「…???
そのかたは…どなたですか?」
よしのはふみのが言いかけている途中で
杏寿郎に視線を向けた。
「はじめまして!
れんごくきょうじゅろうといいます!」
「…きょう、じゅろさま…」
よしのは初めて見る杏寿郎を
怪訝そうに見つめた。
「と、とうさまのおきゃくさまよ!
いっしょにあそぶことになって…!」
「…ふーん。
じゃあ、きょうじゅろさま、
おそとでかくれんぼをしましょう?」
「はい!よろこんで!
では、おれがおにになります!」
「…! あ、あの!
おにはわたしが、やります…っ」
杏寿郎は笑顔で引き受けてくれるも、
ふみのは客人に鬼役になってもらうのは
申し訳ないと思った。
「いえ!かまいません!
ふみのさんはかくれてください!
ではかぞえます!」
杏寿郎はふみのににっこり微笑むと、
壁に顔向けて目を瞑り数をかぞえはじめた。
…きょうじゅろうさんって…
おひさまみたいにわらうひとだわ…
ふみののこころは
陽の光が差し込むように
ぽっとあたたくなる。
ふみのは背中を向ける杏寿郎を
じっと見つめてしまっていた。
「ふみのねえさま?
おそとにでて、
はやくかくれましょ!」
「あっ、う、うん!」
ふみのはよしのの声に
はっと我にかえると
隠れ場所を探しに屋敷の庭へと向かった。
・・・
えーと…どこにかくれよう…
どうしても隠れ場所が見つからない。
ふみのは気付けば中庭まで来ていた。
よしのは、ふみのを置いて
先にどこかに隠れてしまったらしい。
中庭は園芸好きな母・みちのお気に入りの場所で、
様々な種類の草花が植えられていた。
ふみのはみちのお陰で
数多くの花の名前を覚えられた。
毎朝、水やりをみちと行うのが
ふみのの日課になっていた。