火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第5章 それぞれの思い
月日は経ち、
杏寿郎は、槇寿郎がいる鬼殺隊への入隊を目指し、
藤襲山で行われる最終選別に向けて
今まで以上に鍛錬に集中していた。
煉獄家に代々伝わる"炎の呼吸"を
槇寿郎から継承するために、
そして瑠火が残した言葉を胸に、
日々限界まで鍛えていた。
ふみのもそれに追いつこうと
必死に杏寿郎と鍛錬に励んだ。
だが、ふみのは槇寿郎と杏寿郎に
自分も鬼殺隊へ志願していることを
まだ伝えられずにいた。
なんとなく引き止められそうな
気がしていたからだ。
ふみのはまさか自分が鬼殺隊を目指したいと
思うようになるとは考えてもみなかった。
初めのうちは、杏寿郎から教えてもらう
新しい知識に胸をときめかせていたが、
日々鍛錬に打ち込んでいるうちに
段々と体に染み込んでいく巧手にのめり込んでいった。
そして槇寿郎が自分を救ってくれたように、
この世にいる鬼を倒し、
人々が平和に暮らせる世界に
していきたいと思っていた。
これ以上、自分と同じような思いをしてほしくない。
そんなことが起こってはならない。
(ちゃんと槇寿郎様と杏寿郎にも話さなくちゃ…)
どんな返事がくるのか、
ふみのは少し不安にも思っていた。
だが、槇寿郎は瑠火の死後、
人が変わったように酒浸りな日々を送るようになり、
突然炎柱を退き、鬼殺隊からも身を引いた。
杏寿郎や千寿郎、ふみのにも、
素っ気ない態度をとるようになった。
あの日、助けてくれてた槇寿郎の姿はどこにもなく、
どんどん人が変わっていく槇寿郎に、
かける言葉が見つからなかった。
「ふみの、父上がすまないことをした。
…きっと母上のことがあったからだと思う」
「ううん。私は大丈夫よ。
槇寿郎様の気持ちを思うと私もとても苦しい。
でもきっと本心ではない気がしているの」
「ああ、それは俺も思う。
いつかきっと前のような父上に戻ってくれると信じている。
…俺が柱になれば、きっと心を変えてくれるかもしれない」
「うん、きっと槇寿郎様は分かってくださるわ。
杏寿郎のこともきっと想っていると思う。私も信じてる」
「ありがとう、ふみの」