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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第1章 本家と分家




健一郎の手を引きながら、よしのを探す。

「いないねえ。どこまで隠れにいったのかしら」

「あっちの、おやしき、かな?」

健一郎が指差す方は分家の屋敷だった。

一ノ宮家は本家と分家で屋敷が大きく別れていた。
本家も分家も同じくらいの大きさの屋敷で、
まさか分家の方によしのは隠れに行ったのではと
ふみのの脳内を過った。

普段は健蔵や上の人達くらいしか分家との交流はない。
季節の行事で時々一緒に過ごしたりもするが、
ふみののような子ども達は分家と関わることは滅多にない。

分家に繋がる廊下を進もうとした時、
その奥で誰かが通り、ふみの達に目を向けた。

(…あれ、あの男の子は、確か…)

きちんとした佇まいで、
同い年くらいの少し吊り目の少年が立っていた。

名前を思い出そうとしていたところ、
少年が先に口を開いた。

「…何をしている」

怪訝そうな顔でふみの達をじっと見ている。
心臓がびくっとなり、ふみのは後退りしてしまいそうになった。

「…すみません、
 黒髪の女の子を見かけませんでしたでしょうか?」

「…黒髪?さあ。
 そんなことよりも本家の人間がここまで来ていいのか」

ふみのはみちから言われたことを思い出した。

『分家には、御用があるとき以外は行ってはなりませんよ』

(…そうだ、分家には来ちゃいけなかったんだ、忘れていた…)

やってしまった…と後悔していると、
その少年は更に顔を険しくさせ、ふみの達に向かって話す。

「本家の人間だからといって好きなことをしても構わないのか。
 これだから本家の人間は嫌いだ。
 お前、本家の、ふみのだろう。
 …気分が悪い。二度と俺の前に姿を見せてくれるな」

吐き捨てるように少年は言った。

大して会話もしていない少年に
こんなことを言われるなんてと
ふみのは傷ついたが、
何か本家と分家のことで気分を
害してしまったことがあったのかもしれない。

「…至らない点があり…ご迷惑をおかけしてしまい、
 大変申し訳ございません。失礼を致しました」

本家の長女としての責任もあると感じ、
ふみのは深々と少年に頭を下げる。
それを見て、健一郎も怯えながら頭を少し下げた。

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