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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第29章 蒼海の天水に光るは




 あさ様は きっと…


胸に秘めた想いは
永遠にそこに在り続け、
決して色褪せることはない。

ふみのと杏寿郎は見えなくなるまで
あさの後ろ姿を見届けたのだった。





それからあっという間に一月が経ち、
ふみのと杏寿郎は煉獄家を出た。

転居を無事に終えた後、
二人は新しい住まいにて式を執り行った。
当日は、皆が式に駆けつけ、
あたたかい日差しが降りそそぐ
穏やかな一日となった。

そしてその日、皆の歓声が一番大きく上がったのは、
槇寿郎と瑠火から譲り受けた着物を纏った
ふみのと杏寿郎が姿を見せた時だった。

杏寿郎も幸せそうに目を細めながら、
綺麗だと、何度もふみのを見つめていた。

そして式の最後に、
皆で縁側に集まり写真を撮った。
ふみのと杏寿郎のまわりを
鬼殺隊の仲間達が笑顔で取り囲む
お気に入りの一枚となった。

二人はこの写真を額に入れ、居間の棚に飾った。
その棚には他にも、ふみののお気に入りの海の絵や
瑠火の写真も並べた。

この場所に沢山の思い出を飾っていきたいと
杏寿郎が提案してくれたのだ。


ふみのと杏寿郎は新しいこの家を
とても気に入った。

外へ出かけることも勿論あったが、
二人だけで過ごす家での時間も心から愉しんだ。

朝、太陽が昇り、おはようとともに目が覚め、
朝餉に炊く出来立ての白米の香りが家中に広がる。

晴天の空にたなびく洗い立ての真っ白な寝具の眩しさ。

要と杲が運んできてくれる友の手紙に心綻ばせ、
返信には四季折々の花を挟んだ。

天気の良い午後には、手を繋ぎ海岸線を歩いた。

そして夜は、あたたかい布団で二人一緒に眠る。


"普通"と言われてしまうようなことが、
二人にとっては、幸せそのものだった。


その日の晩、眠りに就く前のこと。

「…あ、そうだ、
 明日はお庭の芍薬が咲くかしら?」

「うむ!そうやもしれん!
 今日、大分蕾が膨らんでいたからな!」

「禰󠄀豆子ちゃんが結婚式のお祝いでくれたお花の種、
 他にもまだたくさんあるの!
 毎日楽しみがあるって…しあわせね」

「ああ、本当だな」


日々、日常の小さなしあわせに
二人の心はときめく。

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