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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第29章 蒼海の天水に光るは




「…! 煉獄様と…一ノ宮様…?」


その女性は、
以前あまねが招集を掛けた柱合会議の後、
耀哉から呼び出された際に傍にいた"あさ"だった。
容姿からしても、耀哉と同じくらいの年齢だろうか。

「え、えと…、あさ様で…
 いらっしゃいますか…?」

ふみのが訊くと、
あさは深々と頭を下げた。

節目がちなあさの瞳は、
海の底のように青かった。

「煉獄様、一ノ宮様、
 ご挨拶が出来ておらず、
 大変申し訳ありませんでした。
 露月あさ(つゆつき あさ)と申します」

「いえ、こちらこそご挨拶が遅れました、
 煉獄杏寿郎と申します」
「改めまして、ご挨拶させていただきます。
 一ノ宮ふみのと申します。
 お参りの途中に申し訳ありません…っ。
 私達、出直しますので…!」

「いえ、丁度終えたところですので、
 お気になさらないでください。

 …決戦後、お二人がご無事だと知り、
 本当に嬉しかったです。
 耀哉様はいつもお二人のことを
 気にかけていらっしゃいましたから」

耀哉の墓を見つめながら、
あさは落とすように小さく微笑む。


 …! あさ様の瞳…っ


青い瞳がちいさく揺れたように見えた。

「…すみません、お引き止めしてしまって。
 煉獄様と一ノ宮様にまたお会いできて
 良かったです。
 どうかお元気で」

「こちらこそすみません…っ。
 私もお会いできて嬉しかったです。
 またどこかで…!」

あさはにこりと笑うと、
ふみのと杏寿郎に再び頭を下げ、
墓地の出口へと歩いて行った。

「お館様は皆に愛され、
 本当に素晴らしいお方だ」

「うん、本当ね…。
 …でも、あさ様、
 …すこし泣いていたように…見えた気がして…」

「…ああ。
 …きっと、お館様のご病状についても
 一番に解っていた方なのやもしれんな」

出口へと向かうあさの後ろ姿が
どんどん小さくなってゆく。


ふみのは
あさの青く揺れる瞳が忘れられなかった。


どんな想いで、耀哉を診ていたのか。

どんな想いで、墓前に手を合わせていたのか。


それはあさにしか分からない想い。
あさだけの想い。

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