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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第29章 蒼海の天水に光るは




その日の午後のこと。
二人は縁側にて一息ついていた。

「ふみの、色々と考えていたんだが…、」

「ん?なぁに?」

「式は新しい住まいの方で、執り行わないか?」

「 ! 」

「その方がきっとふみののご両親も
 喜んでくれるのではないかと思ってな。
 少し先にはなってしまうが…、
 どうだろうか?」

「…で、でも、
 ここでやらなくていいの…?
 杏寿郎にとって大切な場所でしょう…?」

「ああ、でも俺はふみののご両親に
 見てもらいたいんだ。
 ふみのの色打掛の姿を。

 …直接挨拶が出来ない分、
 ご両親が居た場所で
 挙げられたらと考えていた」

杏寿郎の話しを聞いて、
ふみのの瞳が潤んでゆく。

「杏寿郎、色々考えててくれてありがとう…!
 きっととうさまも、かあさまも喜んでくれるわ…!」

「それなら俺も嬉しい!
 今から当日を思うと楽しみでならんが、
 日取りは生活がひと段落したら考えよう」
 
「うん…!
 そうね…、当日は大切な人たちをお招きして、
 美味しいものを食べながら、思い出を話して…。
 皆に寛いでもらえるような
 そんなお式に…できたらいいな」

「うむ!それは名案だな…!
 日時が決まったら早速招待状を送るとしよう!」

「うん!今からとっても楽しみね!」

「ああ!
 何よりもふみのの色打掛姿が
 楽しみでならんな!」

きっと一等美しいに違いない!と
満面の笑みで断言する杏寿郎に
ふみのの胸がどきどきと鳴った。

「あ、ありがとう…っ!
 杏寿郎の袴姿も
 とっても素敵なんだろうなあ…!」

当日のことを想像するだけで、
嬉しさと恥ずかしさで
ふみのの頬が赤く染まった。

髪を耳に掛けながら幸せそうに笑うふみの。
杏寿郎の目尻がふわりと下がる。

縁側に降りそそぐあたたかい陽だまりが
二人をつつみこんだ。



後日、ふみのと杏寿郎は、
鬼殺隊の共同墓地へと向かった。

この土地を離れる前に、
共に戦った同志達、そして耀哉へ
報告をしに来たのだった。

すると耀哉の墓前の前に、
一人の女性が手を合わせていた。


 誰かしら…?


女性はゆっくりと立ち上がり、
ふみのと杏寿郎の方に振り返った。

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