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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第29章 蒼海の天水に光るは




杏寿郎の想いを聞いて、
ふみのは目頭が熱くなる。

槇寿郎はそれを聞くと
笑みを浮かべて静かに頷いた。
千寿郎もうんうんと頷きながら、
瞳を潤ませていた。

「そうと決まれば、
 二人に贈りたい物がある。
 …付いてきてくれるか?」

「「??」」

ふみのと杏寿郎は顔を見合わせる。
槇寿郎は立ち上がると居間を出て行き、
二人は千寿郎と共に槇寿郎の後を追った。


槇寿郎は自室に入ると部屋の箪笥から
絹の風呂敷につつまれた包みを
二つ取り出していた。

ふみのと杏寿郎が畳に座ると、
槇寿郎は二人の前にその風呂敷を置いた。

「これは俺と瑠火が婚礼の際に着た
 羽織袴と色打掛だ。
 随分と時間も経っているので、
 多少仕立て直す必要があるやもしれんが…」

「「…!!」」

槇寿郎はそう言いながら絹の風呂敷を解く。
すると二人の前に艶やかな着物が姿を見せた。

瑠火が身につけた色打掛は、
鮮やかな紅の色は瑠火の瞳を思わせるほどで、
桜と鶴の繊細な刺繍が見事だった。
羽織袴も年数が経っているのにも拘らず、
なめらかな黒の光沢が美しかった。

「…!!
 とっても綺麗なお着物ですね…っ!」

ふみのは瑠火の色打掛に釘付けになる。
ふみのの母・みちは白無垢だったので、
色打掛を見たのは初めてだった。

当時の槇寿郎と瑠火の様子が
目に浮かぶようだった。


「…父上、こんな大切な品物を
 頂いてしまっても本当によろしいのですか?」

「ああ、勿論。
 杏寿郎とふみのさんにだからこそ贈りたい。
 きっと瑠火も、同じことをする筈だ」


槇寿郎が嬉しそうに、幸せそうに笑った。
それを見て、杏寿郎の瞳が揺らぐ。

杏寿郎とふみのは畳に手をついて
頭を下げた。

「父上の御好意に、
 心から感謝申し上げます。
 本当に…本当にありがとうございます」

「槇寿郎さま。素敵な贈り物を
 本当にありがとうございます…っ」

夢のような出来事に、
ふみのは胸が詰まりそうだった。

杏寿郎の妻になれることでも
こんなにも幸せなのに、
瑠火の色打掛まで着られることになるとは。

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