火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第28章 御空の果てまで
「で、でも…、」
戸惑いが隠せないふみのの瞳に涙が浮かぶ。
「…す、すまない!
その、本来ならば正式に、
ふみのに申し出なければならないのだが…、」
杏寿郎は動揺するふみのの手を取り、
じっとその瞳を見つめた。
「ふみのが良ければ…、
…俺と夫婦(めおと)になってもらいたい。
この先の時間を、
俺と共に過ごしてはもらえないだろうか」
「…っ!!」
突然道端ですまない、と詫びる杏寿郎。
ふみのの瞳には涙が溢れる。
「…で、でも、杏寿郎は、
れ、煉獄家の長男だし、
今の生家を、継がなくちゃ、だし、
私は家族も、身寄りもない、
何の取り柄も…、ないし、
…私、なんかが、
杏寿郎の…お嫁さんになるのは、
…きっと相応しくない、し、」
涙が止まらないふみのは
声が詰まってしまい、
何を言っているのか
分からなくなってしまった。
杏寿郎はふみのを見つめ、
その両手をめいいっぱい
ぎゅっと握りしめた。
「俺は…っ、
ふみのに、妻になって貰いたい…っ!!
どんな時も、これからの生涯を
ふみのと共に暮らしていきたい!!」
「…!!」
必死に想いを伝えてくれる杏寿郎に
ふみのはうまく返事が出来ず、
涙でどんどん視界が滲んでしまった。
「どうかこれから先も
ふみのの傍に…居させてはくれないか?」
ふみのは声にならない幸せに
うんうん、と頷いた。
「杏寿郎…、ありがとう…っ、
私も…これからもずっと、
杏寿郎と一緒にいたい…っ!」
「ああ、これからも、ずっと一緒だ!」
杏寿郎はにっこり微笑むとその大きな腕で
ふみのを思いきり抱きしめてくれた。
「…夢みたい…っ、
とっても嬉しい…っ!」
「…ずっと、ずっとふみのに
言おうと決めていた。
花も贈ろうかと考えていたんだが…」
「ありがとう。
でももう充分すぎるくらいに、幸せよ。
本当にありがとう…!
…あれ?」
「…む?!」
ふみのはさらにぎゅっと
杏寿郎に抱きついた。
「ふみの?ど、どうした?!」
「…今、杏寿郎のお腹が
鳴ったような気がしたのだけど…、
気のせいだったかしら…?」