火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第28章 御空の果てまで
「ええ。この土地の気候に合っているのか、
毎年、背丈が大きくなっています、…、」
「「…??」」
すると海保の顔色が曇り、目を伏せた。
「こちらによくいらしていたご家族の奥様が
園芸がとてもお好きで、
“門の前に金合歓の木を植えたい”と仰られて…。
毎年花が咲くのを私も楽しみにしておりました。
とても素敵なご家族で、
お子様達も大変可愛らしく…!
…しかしある日を境に
突然来られなくなってしまったんです。
…聞いた話なので不確かですが、
何やらご家族に不慮の事故があったとのことで…。
…でもいつかまた、
皆様でいらっしゃるのではないかと思い、
このお屋敷は誰にもお譲りせず、
このままにしておいたんです。
お庭も、奥様が大切にさてれいましたから、
庭師に頼んで定期的に整えておりまして。
…またいつか、
ご家族でいらっしゃってくださるといいのですが…」
「「…!!」」
ふみのと杏寿郎は
その話に顔を見合わせた。
すると海保が
ふみのの着物に目を向けた。
「…ああ、そうです…!
ちょうどその薄桃色のお着物と同じような
お召しになった奥様で…、
…??
…はて、つかぬことをお聞きいたしますが、
どこかでお会いしたことはありましたか…??」
「わ、私とですか…?!」
ふみのは思わず、
目を丸くさせた。
「あ、いえ!大変失礼をいたしました。
…その、どこか、
その奥様と容姿が似ていらしたので…」
「…!!」
ふみのが杏寿郎を見ると、
うんと大きく頷いてくれた。
「…あ、あの…!
私、以前ここの屋敷に
住んでいたことがあって…!
父の休みがとれると家族と時折、
この屋敷で過ごしていたんです…!」
「…!! なんと…!!
もしや、ふみのお嬢様…
ではありませんか…?!」
「はい…!
長女の一ノ宮ふみのです!」
海保は瞳を潤ませて、
良かったと、その声を震わせていた。
「まさかこんな日が来るとは…っ!
家内もきっと喜びます…!」
「海保様のことを何も存じ上げず、
大変申し訳ありませんでした…っ」