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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第28章 御空の果てまで





「…小さい頃に、戻ったみたい…っ」


ふみのが泣きそうに笑った。

頬を撫でる風も、あたたかい日差しも、
子守唄のような優しい波音も、
最後に海を訪れた時、そのままだった。


「…今日、ふみのと一緒に
 海を見れて良かった」

「私も杏寿郎とまたここに来ることができて
 本当に嬉しい…っ。
 …家族でここに来た思い出が、
 つい昨日のことみたい。

 今日は連れてきてくれて、
 本当にありがとう…っ!」

「いや、礼を言うのは俺の方だ。
 いつでも、また来よう!
 四季折々の海も是非見てみたい!」

「うんっ!
 今度は槇寿郎様と千寿郎くんも一緒に!
 …あ!そうだ、無一郎くんの鍔…!」

ふみのは
巾着から無一郎の鍔を取り出した。

高く昇った太陽の日差しは、
無一郎の鍔をきらりと照らし出した。


 また 一緒に来ようね 無一郎くん


最期に交わした、無一郎との約束。


「勿論、時透とも一緒に」

「うん…!」


ふみのは無一郎の鍔を
真っ青な空へとかざした。



二人は暫く海沿いを歩き、
千寿郎や銀子へのお土産にと
ふみのは色とりどりの貝殻を拾った。


「杏寿郎…?さっきの道に戻って、
 屋敷が並ぶ通りに戻ってもいいかしら…?」

「ああ、勿論だ!
 金合歓(アカシア)の木を頼りに
 屋敷を探してみよう」


二人は来た道に戻ると
集落が並ぶ通りを歩いた。

「…此処の家々は、
 異国のような造りが多いのだな…!」

日本家屋を基調とされた屋敷には、
所々の箇所に外国を思わせるような
模様や建築が施されていた。

「ここは昔から港町としても栄えていて、
 外国の人達も多く住んでいたみたいなの。
 大きな船が着いた時は、色々な国の人達が集まって
 世界のお祭りみたいだったって、
 とうさまが言っていたわ!」

「成程、それ故に
 このような佇まいになっているのだな!」

ふむふむと、初めて見る景色に
杏寿郎は興味津々だった。

楽しそうに眺める杏寿郎に、
ふみのも笑みがこぼれた。



暫く歩くと、
門から大きく伸び出た木のある屋敷があった。


ふみのはそれを見て、はっと目を見開く。


「…あの木…っ」

「…!」

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