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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第28章 御空の果てまで




高く聳え立つ松の木々の隙間から、
眩しい陽の光が見え隠れする。
ふみのはその日差しに目を細めた。


 …そういえば、よく海辺まで
 よしのと健一郎とかけっこをしてたっけ…


ふと、ふみのは足を止めた。


「…ふみの?」


ふみのは静かに目を閉じる。

木漏れ日が瞼の裏にはらはらと揺れ、
その奥からよしのと健一郎の笑い声が
響いてくるようだった。


海辺へ一番最初に辿り着くのは、
決まってよしのだった。


転びますよと、みちから何度も注意を受けるも、
健一郎はよしの後を懸命に追う。

ふみのは二人の後をいつも追いかけた。

きゃらきゃらと楽しそうに笑うよしのの声。

健一郎は毎回と言っていいほど転んでしまい、
その度にふみのは小さい健一郎を抱き起こしてあげた。


ふみのが目を開けると、
そっと杏寿郎が微笑む。

「…この松林は、随分前からあるのだな。
 どの松の木も幹が大木だ」

「ここは昔、海風が強くて、
 暴風被害が多くあったって、
 とうさまが言っていたわ。
 それで暴風から集落を守るために、
 たくさんの松の木を植えたって…。

 松の木も、風に負けないように
 一生懸命大きく成長してきたのね…」

「うむ、そうやもしれん。
 素晴らしい適応能力だ。
 …木々も皆、生きているのだな」

二人の進む道の足元は、土から砂へと変わり、
前方に白く大きな砂浜が見え始めてきた。



そしてその先に広がる、
煌めく大海原がその姿を見せた。



ふみのと杏寿郎は、
その絶景に息を呑む。



「…全然…変わってないわ…っ」



白い鴎が二人の頭上をゆるやかに舞う。
鳶も空高く、弧を描いて飛んでいた。



ふみのと杏寿郎は、
手を繋いだままゆっくりと波打ち際へと歩いた。



ふわりと沈む足元に、
砂浜の柔らかさが伝わる。

色とりどりの貝殻が
砂浜を鮮やかに彩っていた。



そして波打ち際の境まで来ると、
足を止めた。



「…とっても綺麗ね…!
 ずっと見ていられるわ…!」

「ああ、風も心地良い。
 …あの水平線の向こうにも、
 数え切れないほどの国々が広がっているのだな…!」




どれぐらいそうしていただろうか。

二人は時間を忘れて、海の景色を眺めていた。


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