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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第28章 御空の果てまで




「…そうだな。
 ふみのがその場所を大切に想うこと、
 そして過ごしてきた思い出は、永遠だ」

ふみのは杏寿郎の腕の中で、
うんうんと、静かに頷いた。

「…杏寿郎、ありがとう。
 そうね、思い出はなくなったり、しないよね。
 …想いは、永遠よね」

「ああ。決してなくならない。…絶対にだ」

杏寿郎はさらにぎゅっと、
ふみのを抱きしめてくれた。

ふみのは大きく深呼吸をして顔を上げた。
杏寿郎の優しい眼差しがふみのに降り注ぐ。


「うん。…私、海を見にいきたい」


杏寿郎はふみのを見つめ、
ゆっくりと頷いた。


「ああ、一緒に海に出かけよう」

「うん…っ!」


嬉しそうににっこり微笑むふみのに
杏寿郎にも笑みが溢れた。

「さあ、朝餉にしよう。
 千寿郎がふみのの好きな
 苺を用意してくれていたぞ!」

「え!本当に??嬉しいわ!」

二人は部屋を出ると、
槇寿郎と千寿郎とともに居間で朝食をとった。



朝食後、二人は最後の身支度を終えると、
門の前まで槇寿郎達が見送りをしてくれた。

「杏寿郎、ふみのさん、
 くれぐれも気をつけてな」

「はい、父上!
 行って参ります!」

「お天気が良くて、本当に良かったです!
 お土産話を楽しみに、
 お帰りをお待ちしていますね!」

「ありがとう、千寿郎くん!
 行って参ります!」

杏寿郎とふみのは二人に手を振ると
駅を目指して歩き始めた。





そして汽車に揺られること一時間。


駅に降り立つと、ふわりと潮の香りが
ふみのと杏寿郎の鼻腔を掠めた。

「…この香り、懐かしい…っ!」

「ここまで潮の香りがするとは!」

汽車が駅を過ぎ去り、耳を澄ますと、
潮騒の音が聞こえてきた。
ふみのはくるりと駅を見渡した。

「この駅の雰囲気…、
 昔と全然変わってないわ…!」

「そうか!
 趣があり、あたたかみのある駅だ!
 海は…あの松林の向こうだな。
 早速向かおう!」

「うん…!」

二人は駅を出ると手を繋ぎ、
海岸を目指して歩き出した。



暫く道を進むと、
波の音が徐々に大きくなってきた。

それに加えて、
松の葉が擦れる音も聴こえてくると、
目の前には深緑色に茂る松林が広がっていた。

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