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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第28章 御空の果てまで




翌朝。
煉獄家に清々しい陽光が降り注ぐ。


「うむ!今日は頗る良い天気だ!」

「ほんとね…!
 絶好の海日和ね!」


杏寿郎が庭へと続く縁側の障子を開けると、
雲ひとつない鮮やかな青空が広がっていた。

「朝餉を済ませたら、
 早速海へと出向こうと思うのだが…どうだろうか?」

「うん!
 そうしたら朝食の支度をしてくるわね!」

すると廊下から
ぱたぱたと足音が聞こえてきた。

「兄上!ふみのお姉様!
 おはようございます!」

「千寿郎!お早う!」
「千寿郎くん!おはよう」

「今日はとてもお天気が良いですね!
 海にお出かけになられるのですか?」

「ああ!今まさにその話をしていてな!
 朝餉を済ませたら、早速出かけようと思う!」

「畏まりました!
 では朝食の準備は俺がしますので、
 兄上とふみのお姉様は
 出発のお支度をなさってください」

「えっでも…っ」

「大丈夫ですよ。
 俺のことはお気になさらずに」

「ふみの、ここは千寿郎に甘えさせて貰おう。
 千寿郎、すまないが頼んでも構わないか?」

「はい!勿論です!」

「千寿郎くん、いつもありがとう…っ!」

「いえ!
 ではご用意ができたら
 またお声がけいたしますね」

そう言うと、
千寿郎は台所へと向かって行った。

「ふみの、着替えを済ませてくる!」

「うん!私もそうするわ!」

杏寿郎とふみのはそれぞれの自室へと向かう。

ふみのは部屋に入ると、
巾着に必要な小物を詰めた。

そして最後に絹に包んだ
無一郎の鍔もそっとしまった。


 無一郎くん
 今日はとってもいいお天気よ

 楽しみね…!


ふと、壁に掛かった海の絵を
ふみのは眺めた。


 …最後に海に出かけたのは
 いつだったかしら…

 変わらずに
 そのままであるといいな…っ


目を瞑ると蘇る
海で過ごした家族との懐かしい思い出。

しかし、ふみのは少々心配でもあった。

過去の思い出の地が、
その形を変えて無くなってしまっていたらと。

勿論この世には、
普遍的なものなど無い。

常に人や物事は、その時の流れや
時代に合わせて少しずつ姿形を変えていくのだ。

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