火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第27章 ふたつのあかり
銀子は杏寿郎にも頭を下げると、
にこりと目を細め、
再び空へと飛んでいった。
見送リヲシテクル!と
杲も銀子ノ後を追った。
ふみのと杏寿郎は
二人の姿を見えなくなるまで見つめた。
「…あまり体調が思わしく無いと聞いていたが、
回復した姿を見れて安心した。
ふみの、天気が良ければ
明日にでも海へ出向こう。
時透に…海を見せてやりたい」
「うん…っ」
ふみのは部屋の机に
絹の布を敷くとその上にそっと
無一郎の鍔を立て掛けた。
空は少しずつ茜色に染まり、
太陽が西の空に傾き始めていた。
ふみのは今晩の夕食に、
無一郎が好きだったふろふき大根を
作ろうと決めたのだった。
「そうしたら、
そろそろお夕飯の支度をしようかな!」
「うむ!
…ふみの、
台所に…大根はまだ残っていただろうか?」
「大根?うん!
確か…あともう一本だけあったかな?」
「そうか!
…ふみのの手を煩わせてしまうやもしれんが、
ふろふき大根の調理方法を
教えてはもらえないだろうか。
…時透にふろふき大根をと、思ってな」
「…!
私もね、今夜は
ふろふき大根を作ろうかなって思っていたの!」
「そうか、それは良かった!
今まで料理はふみのと千寿郎に
任せてしまっていたので、
少しずつやもしれんが、
俺も腕を上げていきたいと思っていてな!」
「ふふっ、じゃあ記念すべき
第一回目の“料理教室”は
ふろふき大根ね!」
「成程!料理教室か!名案だな!」
「これから毎晩楽しみね!」
「うむ!」
杏寿郎は嬉しそうに笑った。
早速、意気込む杏寿郎を見て、
ふみのにも笑みが溢れる。
そして陽が落ちる頃、
千寿郎も交えてふみのと杏寿郎は
三人でふろふき大根を作った。
千寿郎も杏寿郎と過ごせる時間が増えて、
嬉しそうだった。
槇寿郎も、自室の古書を整理すると言って、
杏寿郎、千寿郎とともに書斎の片付けを始めていた。
息子二人と何気ない会話をしながら
楽しそうに過ごす槇寿郎の姿は
父親そのものだった。
この幸せな時間が
いつまでもずっと
続きますように
ふみのは毎晩、
煌めく星空にその祈りを捧げた。