• テキストサイズ

火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第27章 ふたつのあかり




杏寿郎が言いかけた
その時だった。


「ふみのッ!!」

「 ! 」
「 ! 杲さん!…と、
 銀子さん…?!」


ふみのの部屋の縁側に舞い降りたのは、
杲と無一郎の鎹鴉・銀子だった。

無一郎の死後、体調を崩していた銀子だったが、
他の柱の鎹鴉達がそれを労っていた。
彼女の長い睫毛が艶やかに光る。

「銀子さん…ですよね…?
 体調は大丈夫ですか…?」

「オ陰様デ、大分回復致シマシタ。
 …ゴ心配ヲ、オ掛ケシマシタ…」

銀子はぺこりと丁寧に頭を下げると、
首に巻いていた小さな風呂敷を
嘴で器用に解いてゆく。


「…コレヲふみの様ニ、
 オ渡シシタク、参リマシタ」

「…? …!!
 これは…っ!」


風呂敷に包まれていたのは、
無一郎の日輪刀の鍔だった。


「…ふみの様ト、
 海ニ行ク約束ヲシタト、
 無一郎ガ嬉シソウニ、話シテイタンデス。
 …ソノ時ノ、笑顔ガ忘レラレナクテ。

 オ手数デナケレバ、コノ鍔ヲ、
 一緒ニ連レテッテモラエマセンカ…?」

「…!」


ふみのは無一郎の鍔に目を向けた。

無一郎と交わした最後の約束を
ふみのは忘れてはいなかった。

「もちろんです…っ。
 銀子さんがよろしければ、
 少しの間、お預かりしてもよろしいですか?」

「ハイ。…モシ、差シ支エナケレバ…、
 コノ鍔ヲふみの様ニ、
 オ待チイタダクコトハ、デキマスカ…?」

「えっ…!」

銀子からの突然の申し出に、
ふみのは戸惑いを隠せない。

「で、でも、その鍔は銀子さんにとって
 とても大切なものではないのですか…?!」

「…キット、アノ子モ…、
 無一郎モ、喜ブト思イマス」

「銀子さん…っ」

そう言うと、銀子の瞳は揺れていた。
ふみのは、無一郎の鍔を手に取ると、
胸の前でぎゅっと抱きしめた。

「…銀子さん、分かりました。
 大切に…お預かりさせていただきます」

「…アリガトウゴザイマス。
 宜シク、オ願イイタシマス」

銀子は深く頭を下げた。

「銀子殿、
 此方までわざわざ届けてくれてすまなかった。
 くれぐれも、無理のないようにな」

「杏寿郎様、オ気遣イイタダキ、
 アリガトウゴザイマス。
 …デハ、マタ」

/ 545ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp