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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第27章 ふたつのあかり




蝶屋敷でその夢を見てから日は大分経っていたが、
その記憶は不思議と鮮明だった。

「…もしそうだとしたら、
 俺とふみのは出会うべくして、
 出会ったことになるのだな」

「ふふっ、そうね、
 本当にそうだったら嬉しいな…!」

「うむ、きっとそうだ。
 心弾む事も、…悲しい事も互いにあったが、
 ふみのと過ごせる日々は
 ずっと前から…決まっていたのやもしれんな」

杏寿郎は、膝の上に置かれた
ふみのの手を握り微笑む。

杏寿郎の変わらないぬくもりは
ふみのの心もつつみこんだ。

「夢のお話の最後に聞こえた
 希(まれ)という言葉の読み方は
 他にもあってね、」

「…? 他にも?」

「そう。

 …希(こいねが)う、って、
 読むみたいなの。

 光の呼吸は希望の他にも、
 誰かを想うことも、
 大切にしてきた呼吸だったのかなって。

 鬼を滅するのではなく、救おうと思う気持ち。
 そして自分の周りにいてくれる
 大切な人達を想うこと。

 光の呼吸は、
 誰かを想い、生きていく意味を、
 教えてくれたような気がするわ」

「…そうか、希(こいねが)う、か…。
 そんな意味があったとは、
 俺も初耳だ。良い言葉だな」

「ね。もうこの先、
 光の呼吸を使うことはないけれど、
 教えてもらったこの想いは絶やさずに、
 これからを過ごしていけたらいいな」

「うむ、愛する人が居る限り、
 この想いは無くなることはない。
 …人だけに限らず、
 愛するということ以上に
 勝るものはないだろう」

「ほんとね。
 これからもずっと、世界中の人々が
 誰かを想う、やさしい毎日を
 過ごしていけたら…幸せね」

「ああ、大丈夫だ。きっとそうなる。

 …ふみの、その、
 ふみのに伝えたいことが、あってな」

「? なぁに?」

突然黙り込む杏寿郎の頬は
少しずつ赤くなっていく。
何やら緊張しているのか、
握られたままの手は更にぎゅっと強くなる。

「…杏寿郎…? ど、どうしたの…?」

何を言おうとしているのか
全く検討の付かないふみのにまで
緊張が伝わってくるようだった。

「その、ふみのにずっと…、
 ずっと言おうと決めていたことがある。
 …ふみのが良ければ…俺と…、」

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