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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第27章 ふたつのあかり




それから数日後の昼のこと。

ふみのの自室で、
海への行き方を調べるため、
二人は列車の路線図を眺めていた。

「…うむ!この駅で乗り換えが必要だが、
 然程時間は掛からないだろう!」

「うん!
 朝出発すれば、お昼前には着きそうね」

「ああ、駅から海も歩いてすぐ着く距離だ。
 …因みに、ふみのが時折、
 家族と行っていた住まいも
 海辺の近くにあるのか?」

「うん!…少し記憶が朧げだけど、
 海を出て、二つ目の通りの辺りにお家があって…。
 …確か、お家の門の所に、
 大きな金合歓(アカシア)の木が植えてあったの。
 春が近くなると、鮮やかな黄色い花が
 たくさん咲いて、とっても綺麗だったわ」

「金合歓か!
 ではそれを目印に探してみよう!」

「うん…!」

ふみのと杏寿郎は
部屋に飾られた海の絵を見つめた。

飾ってから何年も経つ海の絵は、
変わらずその群青色を煌めかせていた。


「…杏寿郎?あのね、」

「ん?」


ふみのは
蝶屋敷で見ていた夢を思い出していた。


「光の呼吸の“光”は…、
 火に恋を…していたの」

「…? それは一体…?」


ぽつりぽつりと話し出すふみのを
杏寿郎はじっと見つめていた。

「…どれくらい前の出来事で、いつの話なのか、
 全然分からないのだけど…。

 二人はとても惹かれ合っていて。

 …でもある時、火の灯火は消えてしまって、
 光は一人になってしまったの。

 光は悲しみに暮れて、
 どんどんその輝きが弱まってしまって…。

 それを見て闇は、
 暗闇の世界へと引き込もうとしてきて。

 …でもね、光は想うの。


 “また火に会いたい”って。


 闇はその想いに勝てずに退いて…。
 光はまた輝きを取り戻すと、
 火に会えることを待ち望んで、
 その想いを胸に、生きていくの。

 そして光と火はね、また再会して…、
 しあわせに暮らすの」

「…もしやその“火”というのは、
 炎の呼吸を指しているのか…?」

「…はっきりそうだとは言い切れないのだけど、
 …もしそうだとしたら…、いいなって。

 私と杏寿郎が出会えたことで、
 二人はまた再会できたのかなって。

 そして何より…、
 杏寿郎と出会えたのは、
 この物語があったからなのかなって…思ったの」

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