火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第27章 ふたつのあかり
「…早く行くぞ、不死川」
「ハァ?!何勝手に決め…っ」
「不死川さん!一緒に行きましょう?!
きっと楽しいです!」
「っ…!」
ふみのにじっと見つめられ、
実弥は恥ずかしそうにじりっとたじろぐ。
「…不死川、具合でも悪いのか」
「うるせェ!!何処も悪くなんかねェ!!
あ"〜〜…もう行きゃいいんだろうが!!」
実弥は、ふんっと顔を背けた。
義勇もその表情は大きく変わらないが、
心なしか嬉しそうだった。
「…煉獄。以前、不死川と立ち寄った
蕎麦屋が美味かった」
「蕎麦屋か!良いな!
ではそこに向かうとしよう!」
「…一ノ宮、蕎麦は食べられるか」
「はい!お蕎麦好きです!食べられます!」
「不死川、蕎麦屋に行くぞ」
「・・・」
着々と外堀を固められ
逃げ場を無くしていく実弥。
「そういえば、不死川は甘味が好きだと聞いている!
良ければ食後に、甘味処にも寄らないか?」
「?!」
杏寿郎の突然の問いかけに
実弥はびくりと肩を揺らす。
「そうなんですね!
不死川さんはどんな甘味がお好きなのですか?!」
「…」
視線を逸らし外方を向く実弥の返事を
ふみのはじっと見つめて待っていた。
「…不死川の好物は、おはぎだ」
「ッ!!?」
「おはぎ!美味しいですよね!
私はいつも漉餡か粒餡かで、
迷ってしまいます…っ」
「バッ…!冨岡テメェ!!
勝手にべらべら喋んじゃねェ!!」
「不死川さん!
今度おはぎ、作ってみます!
もし美味しく出来たら
是非食べにいらしてください!」
「…っ!」
「それはいいな!皆で縁側で食べよう!」
「皆さんでまた集まってお食事できるのが
今から楽しみです…っ!
冨岡さんもいらしてくださいね!」
「…分かった。楽しみにしている」
「冨岡は何か好きな甘味はあるのか?」
「…好きな甘味…」
「ぜひ教えてください!
私、作ってみたいです!」
「…考えておく」
「はい!よろしくお願いします!
不死川さんはおはぎで、
杏寿郎はさつまいものお菓子ね!」
「うむ!ありがとう!」
実弥が話す間も無くどんどん話が進でゆく。
実弥は腕を組み横目でその会話を聞きつつも、
三人から見えないように小さく笑っていた。