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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第27章 ふたつのあかり




「…明日、退院か」

「は、はい!お陰様で…っ。
 冨岡さんは、お具合いかがですか…?」

「ああ、問題ない」

「そ、それは良かったです!」

「…」

「…」

義勇の表情は大分柔らかくなってはいたが、
会話に関してはどうしても上手く続かなかった。

「…三日後に、
 最後の柱合会議があるのは聞いているか」

「は、はい…!
 杏寿郎から聞きました。
 …でも私は戦闘を離脱した身ですので、
 出席は相応しくないのではないかと思っていて…」

「柱である以上参加は必須だ。
 その事は関係ない」

「…わ、分かりました…っ」

「…、」

「…?」

義勇は病室の窓に視線を向けた。
すると太陽は分厚い雲に覆い被さり、
部屋の中は薄暗くなった。

「…夢を見た」

「夢…ですか?
 …どんな夢…だったのですか?」

「……蓮が、現れた」

「…!!」

一瞬、義勇の瞳が揺れたように
ふみのは見えた。

「…幸せになって欲しいと、言っていた。
 沢山笑って、沢山生きて欲しいと」

「…蓮は…っ、
 蓮は、…冨岡さんのこと…っ、」

ふと口にしてしまった蓮の想いを
ふみのははっとして口をつむぐ。


「…ああ。俺も…そうだった」

「…!!」

「でも、…もう、…蓮は居ない」


義勇の声が揺れていた。

想い合っていた蓮と義勇を
ふみのは思い浮かべた。


 冨岡さんも 蓮のこと…っ


悲しくも結ばれることのなかったこの恋に、
ふみのは胸を締め付けられた。


「でも俺は、」

「…?」


「忘れない。

 蓮も。この想いも────」


部屋の中に、太陽の陽が差し込む。

義勇はその日差しを眩しそうに見つめていた。


「一ノ宮」

「は、はい!」


義勇はそっと口角を上げ、
ふみのを見て微笑む。


「幸せになれ」


「…!」


ふみのは義勇の笑った顔を
この時初めて見たのだった。

「あ…ありがとうございます…!
 と、冨岡さんも!

 あ、そうだ…!
 今度、冨岡さんのお好きな
 鮭大根、お作りします!」

「……。
 …何故、俺の好物を知っている…?」

「蓮が言ってたんです…!
 冨岡さんは鮭大根、
 自分は鮭の甘酢あんかけで、
 鮭が好き同士なの!って…!」

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