火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第27章 ふたつのあかり
「ああ、彼らは下の階にいるはずだ。
ふみののことを気にかけてくれていた。
禰󠄀豆子も無事に人間に戻れてな。
鬼だったのが嘘のようだ」
「…!!
禰󠄀豆子ちゃんが…っ!
そっか…、良かった、本当に良かったね…っ」
鬼はこの世から姿を消した。
人々が鬼に怯える生活は、
根絶したのだ。
皆がこの日を
どれだけ待ち侘びていただろうか。
それなのに、こんなにも多くの
大切な尊い命を失ってしまった。
鬼のいない世界で、幸せな日々を送りたいと
皆が望んでいたはずなのに。
「…ふみの?」
「…ん?」
目を伏せ、気を落とすふみのの頬を
杏寿郎はそっとつつみこむ。
ふみのはゆっくり顔を上げると、
杏寿郎がやさしく微笑んでくれた。
「…友を失うのは、
身を切られるように悲しく苦しい。
しかし、俺達に“今”があるのは、
皆が守りたいものの為に、
命を賭けて一心不乱に戦いへと
挑んでくれたからだと俺は思う。
これからの俺達の使命は、
この今ある命を、
大切に懸命に生きていくことだと
そう…信じている」
ふみのの頬に涙が伝い、
うんうんと何度も頷いた。
「そうだね…っ、
皆が、皆の未来を繋いでくれたんだね…っ」
「ああ、これからの毎日も
大切に、丁寧に生きていこう」
「うん…っ!」
ふみのと杏寿郎は見つめ合い、
にっこりと笑った。
鬼殺隊の皆が、
そして人々が鬼により負った心の傷跡は
この先も癒えることは決してない。
それでも、
前を向いて生きていかねばならない。
支え合い、助け合いながら、
この先の未来を皆で繋いでいくのだ。
目に見えるものだけが全てではない。
たとえその姿形は見ることは出来なくとも、
ひとの想いと過ごした日々は、
皆の心の中に永遠に生き続けていくのだ。
どんな時も
誰かのために 想うこと
ふみのと杏寿郎は
耀哉が鬼殺隊へと伝えたい一番の願いが
分かったような気がした。
ふみのはカナヲからの診察を受け、
特に大きな問題もないと言われ、
帰宅許可が下りた。
炭治郎と禰󠄀豆子、善逸と伊之助も
ふみのの病室に見舞いに来てくれた。