火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
「ふみのさん!
ここは煉獄さんの言う通りにしましょう。
何かあっては大変ですから」
炭治郎がにっこり微笑む。
杏寿郎もふみのの腫れた掌を
そっと包み込んでくれた。
「ふみの、案ずるな。
今は身体を休めた方が良い」
杏寿郎の笑顔にふみのは小さく頷いた。
「ふみのーーッッ!」
そこに駆け付けてくれたのは、
ふみのの鎹鴉・杲と隊士の村田、
薫子と数人の隠達だった。
「皆さんお怪我は…?!」
村田達は息を切らしながらも、
杏寿郎の腕の中のふみのの様子にすぐさま気付いた。
「ふみのを頼む。
俺達はこのまま無惨を追う」
「畏まりました。
どうかお気をつけて…っ」
「うむ」
杏寿郎は最後にふみのを見つめ、
その頬を撫でてくれた。
「必ず、ふみのを迎えに行く」
ふみのは杏寿郎が握ってくれていた手を
さらにぎゅっと握り返した。
「一緒に行けなくて…ごめんなさい。
どうか…気をつけて」
ふみのは涙を堪え、
二人は見つめ合うと静かにその手を離した。
杏寿郎は村田にふみのを預け、
炭治郎と義勇と共にその先を急いだ。
「ふみのさん、蝶屋敷まで
暫くの間、耐えてください!」
村田はそう言うと、
ふみのを背負った。
…頭が…くらくらする……
ふみのの意識が徐々に遠のいていく。
村田はふみのの呼吸が
荒くなっていることに気付いた。
「…あれ…?ふみのさん…?!
熱がある…?!」
村田の背中に、ふみのからの熱が伝わる。
それはかなりの温度だった。
薫子がふみのの顔を覗き込んだ。
「?! ふみの様の
顔色があまり良くない…っ」
「!?」
村田達は駆け足でその建物を出ると、
蝶屋敷へと向かった。
ふみのは蝶屋敷に到着後、
アオイ達より処置を受けるも
その高熱はなかなか下がらなかった。
ふみのはその高熱に魘されながらも、
夢を見ていた。
それは遠い、遥か昔にあった
小さな物語のようだった。