火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第4章 決意と別れ
「母上!失礼します!杏寿郎と千寿郎です。
入ってもよろしいでしょうか」
「はい、どうぞ」
すっと襖を開き、杏寿郎は緊張した面持ちで
瑠火の布団の側に座る。
その後を追うように千寿郎も、横に座った。
瑠火はじっと杏寿郎と千寿郎を見つめた。
いつもと変わらない瑠火の瞳に杏寿郎は、
今からどんな話しが始まるのかと
膝の上に握られた拳に汗が滲んできた。
「杏寿郎、千寿郎。
最近は全く何もできず、全てを任せっきりにしてしまい、
本当にごめんなさい。
折角の杏寿郎達の鍛錬の時間も削ってしまい、
心苦しく思っています」
「いいえ!そんなことはありません!
すべては母上のためです!
でもふみのが一番に率先して動いてくれており…。
自分自身もふみのには頭が上がりません…」
「毎日、杏寿郎達の元気な声が聞こえると
私は倖せな気持ちになります。
これからも体には十分気をつけて、
父上の言うことをしっかり聞いてください」
「母上…?」
風鈴がちりんと、鳴る。
がらりとその場の空気が変わったのが分かった。
千寿郎は眠たくなってしまったのか
布団の上ですぅすぅと眠ってしまっていた。
「杏寿郎。よく考えるのです。
母が今から聞くことを」
「…?」
「なぜ自分が人よりも強く生まれたのか、わかりますか」
突然の瑠火の質問に、
杏寿郎は慌てて考えたが、全く分からなかった。
「……うっ……。わかりません!」
「弱き人を、助けるためです」
「……!」
「生まれついて人より多くの才に恵まれた者は、
その力を世のため、人のために、使わねばなりません」
母の言葉に杏寿郎は、瞬きをも忘れて聞き入っていた。
「弱き人を助けることは、強く生まれた物の責務です。
責任を持って果たさなければならない、使命なのです。
…決して、忘れることなきように」
「はい!!」
はっと、杏寿郎は気付いた。
自分の使命、自分の責務。
そして、果たすべきことが。