火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
しかしこのままでは
鬼との戦いを終えることは出来ない。
ふみのはみちから体をそっと離した。
「…かあさま?」
「ん?なぁに?」
「…また…、
かあさま達に会えますか?」
幼子に戻ったかのように
みちを見つめるふみのはぐっと涙を堪える。
「ええ、もちろん。
また会えますよ。
私達はいつでも、ふみのと一緒です」
にっこり微笑むみちを見て
ふみのに笑顔が戻った。
そしてまた皆に会える日まで
ふみのは懸命に生きようと胸に誓った。
「…かあさま、ここを出るにはどうしたら…」
「目を瞑ったまま
前を向いて歩き続けるのです。
決して振り返らずに。
そうすれば自ずと戻る道に辿り着けるはずです。
大丈夫ですよ。
ちゃんと、ふみのと杏寿郎さんを
見守っていますから」
みちは最後にふみのを抱きしめた。
「ふみのならやり遂げられます。
…ふみの、大好きですよ」
「かあさま、ありがとう。
本当にありがとう。
私もかあさまが大好き。
行ってきます」
みちは目を細めながら、
両手でふみのの頬を包み込む。
母からのぬくもりは、
何にも変えられない愛情そのものだ。
大丈夫
また皆に会える
そう一言、ふみのは胸の中で呟く。
くるりと後ろを振り返れば、
杏寿郎と瑠火が立っていた。
「ふみの。
名残惜しいが、この先を進もう。
…戦いに戻らなければ」
「うん。皆を…助けなくちゃ」
杏寿郎はふみのに手を差し出すと、
その手をぎゅっと握った。
「二人とも、気をつけて」
瑠火も二人を見送る。
「ありがとうございます。母上。
行って参ります」
「瑠火様、またお会いできて
嬉しかったです…っ」
二人は瑠火に頭を下げると、
前を向いて歩き出した。
伝えたいこと、話したいことが
まだまだ沢山ある。
けれど、これが最後ではない。
心踊る時、笑い溢れる時、
時には悲しいこともあるかもしれない。
ひとは一つずつ乗り越えて、
その運命を生き抜いていくのだ。
また会える楽しみを胸に
今ある生命(いのち)を生きようと
ふみのと杏寿郎は前を向いて駆けて行った。