火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
そして恋雪も、嬉しそうにふみのに礼を伝えた。
「ふみのさんに
お会いできて嬉しかったです。
こうやって狛治さんと再会できたのも、
ふみのさんのお陰です。
また何処かで、お会いできたら…っ」
「そんな、私は何も…!
お二人がまた出会えることができて、
本当に良かったです…!
また、どこかで」
二人は最後に
ふみのと杏寿郎に深く一礼をした。
そしてにこやかに笑いながら、
しずかにその姿を消していった。
「…狛治さんは…、
恋雪さんを護ろうと、
そう思いながら…生きていたのね」
「そうだな…。
鬼は淋しくも、
…与えられたその生命(いのち)を
懸命に生きようとする
想いを持った者なのかもしれない」
ふみのと杏寿郎は
二人が消えた場所を見つめ、
手を合わせた。
ちりん────…
ふわりと風鈴の音が響いた。
幼い頃、
夏に聴いていた懐かしい音。
杏寿郎は、
その音にはっと後ろを振り返った。
そこには、杏寿郎の亡き母、
瑠火が立っていた。
「杏寿郎、ふみのさん。
大きく…なりましたね」
「…母上…っ!!」
「…! 瑠火様…っ!」
二人は瑠火の元へと駆け寄った。
「母上、どうして此方に…っ!?」
「杏寿郎とふみのさんに会える、
そう思っていたら、こちらに辿り着きました」
杏寿郎とふみのは何が起こっているのか
全く分からなかった。
でも目の前には、
ずっと会いたいと思っていた瑠火がいる。
瑠火は当時と変わらない笑顔で微笑む。
それだけで二人の瞳が潤んだ。
「杏寿郎とふみのさんに
お会いできて…夢のようです。
杏寿郎。
今まで大変な思いさせてばかりさせて、
本当にごめんなさい。
…辛い時も、どんな時でも挫けずに前を向き、
己の意思を貫くその姿勢に、
母は…感銘を受けておりました。
槇寿郎さんのことも、千寿郎のことも
いつも気にかけてくれたこと、
本当に感謝しています。
ふみのさんにも…、
感謝しかありません」
ふみのは再会の喜びに声が詰まった。