火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
「もう!!何言ってるの!!
ふみのが助けに来てくれなかったら、
私はとっくにやられたよ!
…私は、ふみのに
この先も、ずっと生きて欲しかった。ただそれだけ。
だからふみのを守れたこと、
本当に良かったって、思ってる。
…ふみのには、絶対幸せになって欲しいって、
今でもずっと…そう思ってるよ」
蓮の腕がさらにぎゅっとふみのを抱きしめた。
ふみのと蓮の瞳から
絶えず涙が零れ落ちた。
「…ありがとう…、ありがとう、蓮…っ」
どれくらいそうしていただろうか。
蓮がゆっくりとふみのの肩から顔を上げた。
「…また会えて本っ当に良かった。
幸せになってね、ふみの」
蓮は満面の笑みをふみのと杏寿郎に向ける。
「うん…!蓮、ありがとう…!
私も蓮に出会えて、本当に良かった…!!」
「うん!あたしも!!」
蓮はふみのから
抱き締めた腕をそっと解いた。
「ほら!杏寿郎くんが待ってるよ!」
ふみのが杏寿郎に振り返ると、
杏寿郎は優しくその手を差し出してくれた。
二人は手を繋ぎ、前を向いて歩き出した。
ふみのが後ろを振り向けば、
蓮が大きく手を振っていた。
ふみのと杏寿郎も大きく手を振った。
蓮が小さく、遠くなっても、
ふみのと杏寿郎は手を振った。
そして二人は手を繋いだまま、歩き続けた。
「…この空間は、
一体何処まで続くのだろうか」
「本当ね…、
ここからは出ることはできるのかな…」
すると、人の気配を感じ、
ふみのは後ろに振り向いた。
「…!」
そこには着物を着た、
雪の結晶の髪飾りをつけた女性が
一人立っていた。
「あ、貴方は…?」
その女性は優しく微笑み、
ふみのと杏寿郎に頭を下げた。
「突然…申し訳ありません…っ。
狛治さんを助けてくださって、
本当に…本当にありがとうございます…っ」
「ハクジ…さん…?」
初めて聞く名に、
ふみのと杏寿郎は顔を見合わせた。