火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
ふみのの刃は更に猗窩座の頚の深部へと進み、
杏寿郎の炎は斬撃を食い止めた。
そして杏寿郎も猗窩座の頚へと
真横から日輪刀を振り落とす。
すると猗窩座の表情に
少しずつ焦燥感が増してゆく。
「…っこの程度で
俺を食い止めたと思うな…っ!!」
「猗窩座!!
私は…っ、私は、
貴方を救いたいの…っ!!」
「っ?!」
「人間だった時の貴方は、
きっとこんなことをするひとじゃない…!!」
猗窩座の目が見開かれる。
その時だった。
ドクン────!!
?!
日輪刀が…っ!!
ふみのの日輪刀が今まで以上に激しく唸り、
柄がじりじりと熱を帯び始めたのだ。
そして刀の表面に
光り輝きながら浮き上がる文字に
ふみのは目を見開いた。
"火光"……?!
そしてふみのの脳裏に
夢の中で聞こえた日輪刀の声が響く
ふみの 唱えよ
火光 - かぎろい - を────
するとふみのの日輪刀が
眩いほどに白い光を放った。
「貴様…っ、何の真似だ?!」
その場に居た皆があまりの眩しさに目を細める。
「…きっとひとは、
何かを、…大切な誰かを守るために、
強くなろうと、自分に、心に誓う。
猗窩座もきっと、そうだったはず…!
猗窩座、
貴方の本当の姿は
鬼なんかじゃない…!
私は、この日輪刀に希(まれ)を込めて
貴方の頚を斬る…!!
光の呼吸 伍ノ型
火光 - かぎろい - !!!」
ふみのは渾身の力を込め、
猗窩座の頚に刺した日輪刀を振り切った。
そして辺りは一面、
真っ白な光に包まれた。
畳に敷かれた布団に
息苦しそうに臥せる一人の女性。
額には濡れた手拭いが置かれていた。
女性は薄らと目を開けると、
申し訳なさそうにこちらを見つめた。
「狛治さん…、ごめんなさい…。
また熱を出してしまって…、
私は迷惑ばかりかけていますね…」
その女性は、布団の脇に正座する男性を
“狛治"と呼んだ。
はく…じ…?
…そうか、俺の名前は
猗窩座なんかじゃない
本当の名前は
狛治だ────…