火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第26章 火光
このままじゃ刀が…っ
日輪刀が音を立てて軋む。
ふみのは力を振り絞り、
猗窩座の拳を避け切った。
拳は僅かに腕を掠めるも、後ろへと着地出来た。
「…弱者ほど目障りなものはない」
猗窩座はその言葉を吐き捨てると、
容赦なくふみのに詰め寄ってきた。
…っ
?!
すると目の前にいた猗窩座は
突如姿を晦ました。
消えた…?!
何処に…っ?!
ふみのは日輪刀を構えつつ、
目線を四方に動かす。
「これで最後だ」
ふみのが眼前に視点を戻すと
すぐ目の前に猗窩座が立ち塞がっていた。
真横から迫り来る拳の速さに追いつけず、
ふみのは死を覚悟した。
間に合わない…っ
ふみのは目を固く瞑った。
「炎の呼吸 参ノ型 気炎万象!!!」
鋭い炎が猗窩座の拳を取り巻くように
腕の付け根から斬り落とした。
「杏…寿郎…?!」
ふみのの目の前には、
杏寿郎がいた。
「…遅くなってすまない。
怪我はないか」
杏寿郎は視線を猗窩座へと向けたまま、
ふみのを庇う。
「大丈夫…っ。
ありがとう…っ」
杏寿郎は猗窩座を激しく睨みつけた。
「…ふみのには
指一本触れさせはしない」
すると猗窩座はにやりとほくそ笑んだ。
「久しぶりだなぁ、杏寿郎。
その速さ、見事だった。
…やはりお前は鬼になるべき存在だ。
…弱者に構っているだけ
時間の無駄だとは思わないか?」
「…何度も言うが、俺は鬼にはならない。
…今日こそ、
お前の頸を斬る」
「…そうか。
その小娘を庇いながら、
俺に勝てるとでも?
…まぁいい、久々の再会だ。
愉しもうじゃないか、杏寿郎。
…破壊殺 羅針────」
猗窩座は冷ややかに笑みを浮かべると、
真っ先に杏寿郎へと飛びかかった。
「炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!!!」
「その瞬発力、素晴らしい!!」
炎は猗窩座の攻撃を打ち消すも、
それ以上の反撃ができず、
その反動に杏寿郎は顔を顰める。
猗窩座の技の威力は以前にも増して
その強度を上げていた。