火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第25章 約束
「…愈史郎殿の血鬼術か。
では二手に分かれて進もう。
私一人と不死川と一ノ宮で…」
「…あの、悲鳴嶼さん、不死川さん。
私はもう少しこの先を進んでいいですか?」
「うむ。…もしや一人で行くつもりなのか?」
「…はい」
ふみのはどうしても
杏寿郎の行方が気がかりだった。
一人では難しくても、杲と一緒であれば
何か手掛かりが掴めるかもしれないと思ったのだ。
行冥と実弥はふみのの意向を汲み取り、
三人は二手に分かれ、
それぞれ無惨を捜索することにした。
「一ノ宮。くれぐれも気を付けろ。
無惨はどんな手段を使ってでも
私達を狙ってくる」
「はい。本部からの指令を元に動きます。
悲鳴嶼さんも不死川さんもお気をつけて」
ふみのは二人に頭を下げると、
その場を後にした。
先を急ぎながら、
ふみのは杲に尋ねる。
「…杲さん、杏寿郎がどの辺りにいるか
推測はできる…っ?」
「…ソレガ未ダ、特定デキテイナイ…。
…ッデモ、杏寿郎ハキット大丈夫…!」
「…うん。そうだよね。
きっと…大丈夫。…杏寿郎は生きてる」
ふみのは羽織の袖口をきゅっと握る。
杏寿郎を信じる気持ちと裏腹に
分からないその安否に
どうしても不安が拭えない。
「…ソレト、ふみの」
「ん?何…?」
「…シノブガ、…上弦ノ弐ニヨッテ
命ヲ落トシタ…」
「…!!!」
「上弦ノ弍ハ、シノブト伊之助、
カナヲニヨッテ討伐シタ」
思いもよらない杲からの訃報に
ふみのの視界が揺れた。
ふみののことをいつも気にかけ、
治療に当たってくれたしのぶ。
この右腕が完治できたのも、しのぶのお陰だ。
しのぶは処置が終わると必ず、
患部に手を当てながら
大丈夫ですよと、優しく声を掛けてくれた。
その言葉に
どれだけ救われ、安心できただろう。
その時の微笑みは
可憐に咲く一輪の花のようだった。
ふみのは込み上げる涙を
走りながら袖口でしずかに拭った。
しのぶさん…っ
失われていく、
たったひとつの尊い生命(いのち)。
ふみのはしのぶの
にっこりと笑う可愛らしい笑顔が大好きだった。
絶対に
この戦いに勝たなければ