火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第25章 約束
「…いや。
一ノ宮があの時、
斬撃を阻止してくれていたからこそ、
我々は最後まで立ち向かうことができた。
感謝している…」
行冥は励ますように、
ふみのの肩に手を置いた。
「…一ノ宮、時透と玄弥の死を
無駄にしてないけない。
…先に進まなければ」
ふみのは俯いたまま、
掌をぎゅっと握りしめた。
ふみのの心の中に思い起こされる
ふと、落とすように笑う無一郎の笑顔。
ふろふき大根を
美味しいと言って食べてくれたこと。
いつか海を見に行こうと
指切りを交わしたあの日。
そして最期に、
無一郎が伝えてくれた想い。
戦わなくちゃ
この世から、鬼を殲滅しなければ
ふみのは無一郎の右手の小指に
自分の小指をそっと絡めた。
「無一郎くん、
…約束、必ず守るからね。
…それまで待っててね」
ふみのは無一郎に微笑み、
その頬を撫でた。
目の前で玄弥を失い、泣き叫ぶ実弥に
行冥は厳しくもまだこの戦いは
終わっていないことを話す。
ふみのはその二人の背中を見て、
自身の日輪刀をきつく握りしめた。
「…おい。一ノ宮」
「…! は、はい!」
ふみのはこの時、
初めて実弥から声を掛けられた。
「あの時、一ノ宮が技を出してくれなきゃ、
…俺達はとっくに死んでたかもしれねぇ」
「…! 全然…っ、むしろ私は…っ」
実弥がふみのに振り向くことはなかったが、
その言葉にふみのの目頭が熱くなる。
「恩に着る」
「…っ」
実弥は残された玄弥の紫色の羽織を
しずかに握りしめていた。
「…不死川、一ノ宮。
もう行かねば」
行冥の言葉に実弥は顔を上げ、
まだ頬に薄く残る涙の跡を手で拭った。
「ふみのーーッ!!」
「実弥ッ!!」
「「「 !! 」」」
するとこそに飛んできたのは
ふみのと実弥の鎹鴉、杲と爽籟だった。
二羽の頭には、目のような模様が描かれた
呪符が貼り付けてあった。
「杲さん…!?
その札は一体…?!」
「コレノオ陰デ、姿ヲ眩マセラレル!!
本部カラノ情報モ伝エル事ガ出来ル!!」