火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第25章 約束
ふみのは柄を握ると目を瞑り、
日輪刀を無一郎から引き抜く。
「つっ…」
そのまま真下の地面へと落ちる無一郎を
ふみのは抱き抱えるように受け止めた。
「ごめんね…無一郎くん…っ、
痛かったよね…っ」
「ううん、平気…。
大したこと、ないよ…っ。
…俺こそ、ふみのさんに
辛いことさせてごめんね…」
「ううん、私は全然…っ、」
ふみのにもたれかかる無一郎は
ゆっくりと体を起こした。
ふみのは持っていた手拭いを
無一郎の傷口に当てて縛り、止血した。
「…この先に、上弦の壱がいるんだ。
ここは俺達で食い止めるから、
ふみのさんは…この先を行って…!
…煉獄さんも
きっと心配してるはずだから」
「…!」
無一郎は自身の日輪刀を握り締め、
ゆっくりとだが立ち上がった。
「無一郎くん、だめ…っ!
これ以上動いたら傷が…!!」
ふみのは止めようとするも、
無一郎は痛みを堪えながら、
小さく笑ってみせた。
「…ふみのさんが止血してくれたから、
もう大丈夫だよ。
助けてくれて…ありがとう」
「私も…一緒に戦うわ…っ!
このまま引き下がることなんてできな…」
「上弦の壱は尋常じゃないくらいに手強い。
…俺は、ふみのさんに
…生きてて欲しいんだ」
「…!」
「…ふみのさん、ごめんね」
無一郎はふみのに微笑むと、
僅かにその瞳が揺れたように見えた。
「…? …無一郎くん…?」
ふみのは無一郎が
何に対して謝っているのか分からなかった。
無一郎は日輪刀を胸の前で構え、
呼吸を唱えた。
「…霞の呼吸 漆ノ型
春霞の夜凪(シュンカノヨナギ)────」
すると無一郎の刀から靄が立ち込め、
それはふみのをやさしく包みこんだ。
「…!? …無一郎くん…?!
……一体… これ は……」
ふみのは眠るようにその場で意識を失った。
倒れ込むふみのを無一郎は片腕で抱きかかえると
柱の影に横たわらせた。
…どうか このまま────…
無一郎は眠りに落ちたふみのを見つめ、
上弦の壱・黒死牟の元へと向かっていった。