火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
お願い…っ
どうか間に合って…っ!
杲の後を追い、
ふみのは懸命に足を走らせるも、
屋敷に近づくにつれて、
ただならぬ異様な空気に全身が強張る。
必死に足を進め、
木々の隙間から屋敷の瓦屋根が見えた、
その時だった。
ドンッッッ─────
─────!!?
地響きとももに鳴った激しい轟音。
目の前から爆風が流れ込み、
ふみのそれを避けるため、
近くの木の影に隠れた。
一体何が─────…っ
─────…っ!
熱風が頬を掠めた。
屋敷の方向に目を向け、
ふみのはその光景に愕然とした。
目の前に見えていた屋敷は
激しい炎に包まれ、
跡形もなく消えていたのだ。
産屋敷邸があったであろう上空には
太い黒煙が立ち上っていた。
…─────そんな…っ
ふみのは言葉を失う。
目の前で起こっていることは、
本当に現実なのかと目を疑った。
そして静かに湧き起こる、悲しみと憤り。
…どうしてこんなことが…っ
気付けば爪が食い込むほどに
強く握られたふみのの拳。
その時だった。
ドクン────────…
─────!
ふみのの腰にある日輪刀が
強い唸りを上げた。
光の呼吸もこの日輪刀も
憎悪を望まない。
ふみのは湧き上がる感情に目を閉じ、
呼吸を整えた。
そして日輪刀を鞘から引き抜き、
銀に光る刃紋を見つめた。
…どんな時も
希を 込めて
この先に在る
希望(ひかり)を胸に─────…
馴染む視界に歯を食いしばり、
ふみのはその言葉を胸に刻み込むと
柄を握り締め、屋敷の方向に走り出した。
此処、鬼殺隊本部である産屋敷邸に現れたのは
この世の全ての鬼を支配する原初の鬼
鬼舞辻無惨であった。
耀哉は自分自身と妻・あまね、娘二人と共に、
無惨へ攻撃を仕掛けるため、
屋敷ごと爆破させたのだった。
柱と鬼殺隊士達は皆、
耀哉の元へ、産屋敷邸へとその足を走らせた。
そして遂に、
鬼殺隊が命を賭けた
宿敵である鬼舞辻無惨との死闘が
始まろうとしていた─────