火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
互いの手に残るそれぞれのぬくもり。
杏寿郎がくるりと振り返れば、
ふみのが門の前で笑顔で手を振ってくれていた。
杏寿郎も笑みを返すと手を振り、
水柱邸を目指し歩き始めた。
その後、
ふみのはひとり縁側で腰掛けるも、
先程の胸騒ぎが一向に収まらずにいた。
何だろう…
この落ち着かない感じは…
異様な悪寒さえ背筋に感じ、
ふみのは身震いをした。
─────…誰かの身に
危険が迫っている─────…?
ふと、そう感じたふみのは
自室に戻り腰に日輪刀を差した。
そして杏寿郎が仕立て直してくれた
生成色の羽織を身に纏った。
大丈夫 落ち着いて
ふみのは大きく深呼吸をすると
祈るように目を固く閉じた。
瞼の裏に映る
杏寿郎の優しい笑顔
いつもあたたかく出迎えてくれる千寿郎
本当の父のように接してくれる槇寿郎
そして、両親のみち、健蔵、
よしのと健一郎
もう会うことはできなくても、
目を閉じればいつでも自分の傍にいてくれるのだ
とうさま かあさま
よしの 健一郎
どうか 鬼殺隊の皆を
御守りください
一日も早く
平和な世界が訪れますように─────…
「緊急招集ーーーッ!!!
産屋敷邸襲撃ィ!!!」
「?!」
家中に響くほどの杲の声が庭先から聞こえ、
ふみのはその方向に走った。
そこには息を切らした杲が
縁側で肩を振るわせていた。
「…オ館様ガ…ッ」
ふみのの脳裏に浮かんだのは
耀哉がいつも見せてくれた
あたたかい眼差しだった。
お館様…っ!
耀哉に危険が迫っている。
一刻も早く、屋敷に使わなければ。
気がつけば、ふみのは
杲とともに本部へと駆け出していた。
最後に耀哉と会えたのはいつだっただろう。
柱全員で耀哉や産屋敷邸に護衛をつけたいと
只管に懇願したのにも拘らず、
耀哉はそれを頑なに拒み続けた。
しのぶ曰く、産屋敷家の歴代当主は皆、
護衛を誰一人つけることはしなかったそうだ。
耀哉は、
この日が来ることを分かっていたのか。
無惨を此処に誘き寄せるために
耀哉は自ら囮になったのだろうか。