火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第24章 照らされた道
「?! ふみの…?!
どうした…?!」
突然のことに目を丸く見開き、驚く杏寿郎。
それを見て、ふみのははっと我に返った。
「ごっ、ごめんなさい…っ!
急に、何だか、怖くなって、しまって…っ。
…杏寿郎が、帰ってこなくなって、
しまうんじゃないかって、
…ごめんなさい、私、どうかしていたわ…っ」
何故か手先が震えた。
何か嫌な予感がしたのだ。
一瞬感じた不穏な雰囲気に
ふみのは動揺を隠せなかった。
「ふみの?何処か具合でも悪いのか…?
顔色があまり良くない気がするが…」
杏寿郎は心配そうにふみのの顔を覗き込み、
そっと手を握ってくれた。
そのあたたかい掌は
ふみのの騒ついた心を落ち着かせてくれるようだった。
「ううん、もう大丈夫よ。
ごめんなさい、急に取り乱してしまって…」
「…うむ、疲れが残っているのやもしれない。
…ふみのが心配だ。
冨岡達には、
要から今日の打ち合いは休むと言っておく。
このまま家に戻ろうと思う」
「えっ、ううん!本当に大丈夫よ!
このあと、すこし一休みするから。
…心配かけてごめんね」
だから大丈夫よと、
ふみのは杏寿郎の手を握り返し、
その頬に手を当てがった。
「本当に大丈夫だから。ね?」
まだ不安そうな杏寿郎だったが、
そのまま何も言わず、ふみのをつよく抱き締めた。
「きょ…っ、杏寿郎…?!」
杏寿郎はただぎゅっと腕に力を込め、
ふみのもそれに応えるように
杏寿郎の背中へと手を伸ばした。
「ふみの、頼む、無理だけはするな。
必ず戻る。…夜はまた、二人だけで過ごそう」
「うん…!
杏寿郎も、無理はしないでね?
あ!あとね、お昼に
さつまいもと林檎の焼き菓子を作ってみたの。
よかったらお夜食に一緒に食べない?」
「それは名案だな…!
ありがとう。今から食べるのが楽しみだ」
二人は顔を合わせて微笑む。
離れていても、自分達は無敵だと
ふみのと杏寿郎はそう確信していた。
「引き止めてしまって、ごめんなさい。
気をつけてね」
「ふみのもゆっくり身体を休めてくれ。
…では行ってくる」
握られた二人の手が名残惜しくもそっと解かれた。